トヨタ式が逆効果になる場合も
本来、会議の役割は次のアクションに向けエンジンを点火することにある。ところがB社の会議は反省を強いるばかりで、出席者を抜け殻状態にしてしまう。部下から前向きな意見を引き出して次のアクションにつなげるためには、どうすればいいのか。寺沢氏は、「トヨタ式の“なぜなぜ5回”を過信するな」と言う。
「現状を受け止めたうえで、『なぜ、どうして』を繰り返して問題の真因を探り、解決策を導くプロセスを原因分析型といいます。トヨタ式が脚光を浴びたせいか、会議で原因分析型を多用する人が後を絶ちません。しかし、原因分析型が効果を発揮するのは、『電気が点かないのはなぜか→スイッチが壊れているから』というように物理的な問題を解決したい場合が中心。ヒューマンエラーを原因分析型で叱ると責任追及になりやすく、部下を精神的に追い詰めることになります。くれぐれも注意が必要です」
出席者の前向きさを引き出したければ、即行動型や理想追求型のアプローチがお勧めだ。即行動型は、現状に対しての解決策を直接的に質問する。例えば遅刻者がいると遅れた理由を述べさせたくなるが、グッと堪えて「明日からどうする?」と単刀直入に訊く。相手も自分のミスを認識しているので、「目覚ましを10分早い時間にセットします」というように何らかの約束をするはずだ。ビジネスの場で必要なのは、本当かどうかわからない反省の弁よりも、解決策とそれに対するコミットメント。ヘタに理由を問い詰めるより、場も暗くならない。
一方、理想追求型は、現状を踏まえたうえで理想に近づくためにどうすればいいかを質問しながら解決策を導いていく。理想に向けて進んでいくので、当然、思考もポジティブになりやすい。
「とくにいまは理想追求型を意識したいですね。市場環境が変わらないのなら、過去の成功体験の原因分析が役に立つかもしれない。しかし、いまは環境の変化が速く、原因分析型のアプローチでは袋小路にはまりかねません。誰も答えを知らない問題にチャレンジするのだから、理想追求型のほうがフィットしやすいと思います」(寺沢氏)