「撃ったときの光景は目に焼き付いている」

暴力団社会では、対立抗争やケンカを「仕事」と呼ぶこともある。実際に対立抗争事件で相手を銃撃した経験がある指定暴力団幹部は、抗争時の心理状態について次のように証言する。

指定暴力団幹部「仕事(抗争)のために現場に行く際は、「これから相手を拳銃で撃ち殺すかもしれない」という思いと、「もしかしたら自分が殺されるかもしれない」という思いがせめぎ合って、異常な興奮状態で神経が高ぶっていた。腹のベルトに差し込んだ「道具」が冷たくて重かったことをよく覚えている。

ケンカで拳銃を相手に向けて発射したときの手ごたえ、強く重い反動はいまだに手に感触が残っているし、強烈な発射音も耳から離れない。撃ったときの光景は目に焼き付いている。」

この幹部は銃撃事件を起こした後、自ら警察に出頭して逮捕され、刑務所での長期の服役に赴くこととなった。

ドラマみたいには上手くいかない

前出の対立抗争事件で銃撃の経験がある指定暴力団幹部「この稼業に入ったら、将来は必ず拳銃を使うようなケンカがあるはずだ。そのために東南アジアに行って、合法的に拳銃を撃てる場所で練習を重ねていた。いきなり拳銃を『はい、どうぞ』と手渡されたところで、すぐに撃てるものではない。

はじめて練習で撃ったときの感触は忘れられない。まず拳銃自体がずっしりとした手ごたえがあり、かなりの重さがある。銃をしっかりと両手で握り、腰を落として慎重に引き金を引かなければ銃弾は前に飛ばない。射撃場ではインストラクターが銃の握り方から教えてくれたが、はじめて引き金を引いて撃ったときは発射の際の反動の強さ、音の大きさに驚かされた。

銃口から煙が出ている銃
写真=iStock.com/cmannphoto
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しっかり銃を握っていても反動が強くてつい銃身が上を向いてしまうことがある。至近距離の2~3メートルであれば的に命中させる自信はあるが、5メートルも離れたら確率はかなり下がる。10メートル離れたらまず命中しない。

ドラマや映画では片手で拳銃を握って撃つシーンがよくあるが、実際にはかなり難しい。小型の拳銃や38口径の拳銃は片手でも撃てるが、45口径のような大型拳銃になると、両手で握らないと反動で前に飛ばない。

拳銃の弾倉には、『回転式』と『自動装填式』がある。自分は回転式を使うと決めていた。撃鉄を起こすとレンコン型の弾倉が回転して確実に銃弾を送り込んでくれるから間違いがない。自動装填式だと銃弾が詰まってしまうことがあると耳にした。いざというときに失敗して『弾が詰まってしまいました』では話にならないので回転式拳銃にこだわっていた。」