「もう10年、せめて60代だったら」とブレーキをかけてしまう

海外にアパートでも借りてそこでひと月ほど暮らしてみるとか、自分には才能がないとあきらめていたけれど憧れだけは残っているようなこと、たとえば絵を描くとかギターやピアノを習ってみるとか、あるいは、いままでは観るだけ、読むだけで満足していた映画や小説を自分で創作してみるといったようなことです。

こういうことは、ほとんどの場合、思いついたとしても、「あと10年若かったら」と打ち消してしまいます。

でも、10年前にもし思いついたとしても同じです。やっぱり「もう10年、せめて60代だったら」とブレーキをかけていました。

その結果、どうなったでしょうか。

自分の人生にいくつもの悔いが残っています。「あのとき、少しぐらい不安があっても、やるだけやってみればよかったんだ」と悔やみます。「だって、いまよりまだ若かったし、まだ元気だったんだから」。

つまり、長生きして後悔する人は、やりたいことができなかったことを後悔するよりも、「やればできたことをやらなかった自分」を悔やんでいることが多いのです。

外を見ている老人
写真=iStock.com/PonyWang
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とにかくやりたいことを始めてみる

几帳面な人ほど、新しいことに手を出してもその入り口でつまずいたり、なかなか先に進めなくて結局、あきらめてしまうことがあります。

どうしても教わった通りにできないことがあったり、自分が納得できるようにいかなかったりするときは、そこから先に進めなくなってしまい、「私には向いていない」とあきらめることが多いからです。

でも、入り口であきらめてしまったら、どんなことでもいちばん楽しい部分や憧れていた瞬間を味わうことができません。何かを習えば発表の場があったり、何かをつくっても完成の瞬間があったりして、そこで「続けてきてよかった!」と喜びに包まれるからです。

70代80代になって、やってみたいことが見つかった場合でも同じです。「好きだから」「楽しそうだから」「ずっと憧れてきたから」、理由はなんでもいいのです。とにかくやりたいことを始めてみる。

最初はうまくいかなかったり、イメージと違っていたりと苦労することが多いでしょう。

そういうときでも、「やっぱり無理かな」と考えるのでなく、「最初はこんなもんだろう」と軽く受け止めましょう。