老後を元気に生きるにはどうすればいいか。医師の和田秀樹さんは「80代を過ぎると、近しい人を亡くすことが増えるが、歳をとるとはそういうことだからクヨクヨしても仕方がない。人間はただ考えていると悲観的になりやすいが、身体を動かす、手を動かすと、なぜか前向きになってくる。ひとり暮らしになる前に、自分のできそうなもの、好きなものも身近にこつこつ集めておくことが大切だ」という――。
※本稿は、和田秀樹『100歳の超え方』(廣済堂出版)の一部を再編集したものです。
60歳の所感「しかし長い会社勤めだったなあ」
100歳生きた方は、100歳まで生きてやろうという欲張りではありませんでした。
特別な若返り方法をしていたわけでもありません。
自分なりの暮らしを楽しんできたら、うっかり100歳になっているのです。
「先生、死なない病になりました」という人もいます。
「来年の桜は見られないでしょう。もう98歳ですよ」とおっしゃる方が翌年の春に、「デイサービスの遠足で桜を見てきました。やっぱりいいですね。来年も花見しますよ」と報告してくれます。
自分の寿命は誰も決めることができません。
がんだった人も脳梗塞を患った人も糖尿病を持っていた人も、病と折り合いながら普通に生活して歳を重ねてしまうことがあります。
60歳の人が100歳の自分を思い描くと、長い道のりだと思います。でもあなたが20歳のときに自分が60歳になるなんて想像もつかなかったでしょう。20歳の人にとっては、60歳なんて実感できない老人です。
20歳から60歳も長い道のりです。しかし60歳の人は「なんだかあっという間に60歳になった」「気分は20歳のころと何も変わってない」「しかし長い会社勤めだったなあ」といろいろな感慨を持つものです。