2011年頃からは売上上昇、ボートレースの伸びが著しい
賭け式も拡充した。11年には重勝式馬券のWIN5が加わり8種類となる。WIN5はインターネット発売のみだ。こうした多様な賭け式の発売はトータリゼータシステム(*賭け金の集計や払戻金の計算・表示をする機械設備)と発券機器の開発とインターネットの発達が無くしてはあり得なかった。
バブル崩壊後、長期にわたり低落を続けていた公営競技の売上は2011年頃からようやく上昇に転じた。基本的には景気回復の影響とみるべきだが、売上回復の度合いは各競技一律ではない。特にボートレースの伸びが著しい。21年度の売上額は2兆3926億円と、1991年度の2兆2137億円を上回り過去最高の売上となっている。ボートレースがもっともとっつきやすい競技だということは確かにあろうが、他の競技に比べると戦略的に広報活動をおこなってきた成果も大きいだろう。
そもそもボートレースは他の公営競技に比べて開催日数が多い。中央競馬とボートレースは縮小期でも開催日数を減らさなかった。91年度と2010年度の開催日数を比較すると、地方競馬、競輪、オートレースはいずれも約4割減っている。競技場の廃止や選手数の減少は、製造業でいえば工場や熟練工の削減にあたる。景気が良くなったからといってすぐに増やせるものではない。あくまで結果論だが、「工場」と「熟練工」を維持したボートレースの成長は当然だろう。
※「*」がついた注および補足はダイジェスト作成者によるもの
コメントby SERENDIP
公営競技がこれまで、観客のマナーの悪さや騒音などの問題もあってつねに社会から批判の声を浴びながらも続けられ、発展してきた背景には、民間の力を活用し、テクノロジーや新たなファン層の獲得など努力を続けてきたことがあるようだ。スマートフォンを片手に若年層でも気軽に投票を楽しめる環境を整えた。ただし、今後も公営競技を持続させていこうとすれば、根拠法に掲げられている競技をおこなう理由にとどまらない新たな存在意義(パーパス)をより明確にし、地域住民や顧客など関係者からの信頼を築いていくことが求められるのではないだろうか。
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