ソフトバンクと楽天が参入した

1995年11月にウインドウズ95日本語版が発売され、本格的なインターネット社会が日本に到来する。ISDN回線の普及やPCの性能向上、加えて携帯電話も普及し、自宅以外からの(*各競技の)投票も可能となった。98年4月、函館競輪のホームページが開設される。7月には初のナイター開催が函館競輪場で実施され、ホームページでオッズ(*投票券が的中した場合の概算払戻率)の表示やレースの動画配信が開始される。

04年の競馬法改正では馬券発売を私人に委託することが認められた。競馬法に続き、自転車競技法をはじめとする他の公営競技の根拠法も同様の改正がなされている。この改正で時代を代表するIT大手2社が公営競技に参入する。ひとつはソフトバンク、もうひとつが楽天だ。

NAR(地方競馬全国協会)の子会社日本レーシングサービス(NRS)が全国共同在宅投票センタ(ARS方式電話投票)の運用を1998年から開始し、さらにPAT方式(*ひとつのIPアドレスを複数のコンピュータで共有する技術)による投票システム「D-net」をスタートさせていた。

競走馬のシルエット
写真=iStock.com/Deejpilot
※写真はイメージです

公営競技の担い手はIT企業へ

ソフトバンクの子会社がNRSからD-netの譲渡を受け、2006年4月、地方競馬総合サービスサイト「オッズパーク競馬」がオープンする。オッズパークは、オッズ、投票、レース動画に加え、様々なレース情報を会員に提供するサービスを開始した。いわゆる民間ポータルサイトの誕生だ。楽天グループは06年8月に競馬モールを運営会社とする「楽天競馬」を発足させ、07年から馬券の発売を開始する。オッズパークや楽天競馬は当初からインターネットバンキングを活用することで利便性を高めたことも見逃せない。

オッズパークと楽天競馬はともに04年競馬法改正で解禁された重勝式馬券も発売している。重勝式は複数のレースの一着を全て当てる賭け式で、的中者がいない場合のキャリーオーバーが採用されている。そのため理論上は的中配当が10億円を超えることも起こりうる。的中者に支払う金額が巨額になることも起こりうるため、現金での発売・払戻をおこなう本場や場外発売所では実施しにくい賭け式だった。

08年にはチャリ・ロトが、ソフトバンクグループや楽天グループに先駆け、インターネットで競輪の重勝式車券「チャリロト」の発売を開始している。同社は19年にミクシィ(現・MIXI)の傘下にはいる。10年には日本トーターがGamboo(ギャンブー)という情報サイトをオープンさせ、12年からは車券の発売を開始する。また、サイバーエージェントも18年にWinTicketを設立し「ウィンチケット」の名称で競輪・オートレースの車券の発売を開始している。いずれもIT時代を代表する企業だ。こうした企業が今や公営競技の担い手になっている。