日本のスゴさをアピールするチャンスなのに

さて、こういう話を聞くとちょっと不思議だろう。前回の愛知万博から20年ぶりの自国開催に加えて、参加国は史上最多の160カ国・地域となっている(2023年11月時点)。日本人が大好きな「日本のスゴさを世界にアピール」という意味では、格好の機会だ。

経済効果もそれなりにある。一般財団法人アジア太平洋研究所(APIR)が2023年7月に発表したレポートによると、2兆3759億円という数字が試算されているが、エコノミストの中には実際はその何倍にものぼるという意見もある。しかも、人気芸人を多数擁する吉本興業もパビリオンを出展するということもあって、会社を挙げて盛り上げている。

1万円札
写真=iStock.com/fatido
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パッと見た感じでは盛り上がる要素だらけで、テレビも露骨に「国威発揚」をしている。にもかかわらず、なぜこんなにも庶民はシラけているのか。

いろいろなご意見があるだろうが、筆者はやはり「東京2020のトラウマ」が大きいのではないかと思っている。そのトラウマとは何かというと、ちょっと長いが具体的に言えばこんな感じだ。

東京五輪で思い知らされた「現実」

「この手のイベントは盛り上がったところで、いざ開催してみると潤うのは一部の企業で、国民になんの恩恵もなく借金だけしか残らない」という、みんな薄々気づいていたけれど、空気が悪くなるので言わなかったシビアな現実が、東京2020後にさすがにゴマかしきれなくなったことで、植え付けられてしまったトラウマである。

東京2020もコロナ禍による開催延期や不祥事続発などすったもんだがあったが、いざ開催となったら国民はお祭り騒ぎで盛り上がった。会場は無観客だったが、金メダルも過去最多となり、メディアは連日連夜のお祭り騒ぎで、「五輪特需」もそれなりにあった。

わかりやすいのは、日本代表選手団の公式服装を手掛けた紳士服のAOKIだ。連日メダルラッシュが続いたことで「東京2020公式ライセンス商品」がよく売れてシリーズ累計で3万着を販売した、と当時のニュースになっている。

2022年8月、五輪ライセンス商品の便宜を図ってもらうため、五輪組織委員会の理事に賄賂を送ったとして逮捕されているが、それだけ危ない話を渡るほどの「旨味」が五輪特需にあったのだ。