経済効果32兆円どころか2兆円超の赤字に

このように一部のスポンサー企業やゼネコンなどは確かに五輪で儲かった。が、日本国民の大半のサイフには影響は「ゼロ」だった。

21年はコロナ禍が終わったことで一時的に実質賃金が上がったように見えたが、それからもずっとマイナスが続いている。五輪後の22年、日本の1人あたりGDPは落ち続けてついに台湾に抜かれた。このように日本の衰退に歯止めがかからないことを示すデータは山ほどあるが、なによりも、一般庶民の「体感」として、東京2020が日本の景気に与えた影響など「ゼロ」ではないか。

いや、厳密に言えばゼロどころかマイナスだ。

東京2020の経済波及効果は、開催前は東京都だけで約20兆円、全国で約32兆円とかなり強気の見積もりがなされていた。もちろん、コロナ禍でその皮算用がすべて崩壊してしまったが、先ほども申し上げたように、なんとか開催にこぎつけて大盛り上がりしたので、それなりの経済効果があった。実際、関西大学の宮本勝浩名誉教授が試算したところ、経済効果は約6兆1442億円あったという。

ただ、その一方で32兆の経済効果を見積もっていただけあって、莫大ばくだいな費用がかかっており、トータルでは組織委員会や国、東京都の赤字総額は約2兆3713億円になったという。

みんなで凄まじい「散財」をしてしまった

しかも、「レガシー」ということで東京都や国は新しい施設を建てまくったので、それが毎年赤字を垂れ流す。例えば、新国立競技場は毎年約24億円、東京アクアティクスセンターなど東京都の施設も毎年約7億3200万円の赤字を垂れ流すことが確定しているのだ。もちろん、これらはすべてわれわれの税金から賄われる。

「消費税をゼロにせよ」「税金の無駄遣いを許すな」と叫びながら、なんのことはない、実はわれわれ自身が東京2020で凄まじい「散財」をしてしまっているのだ。

そう聞くと、「オリンピックはそもそもアスリートのための平和の祭典だぞ、カネの話や景気がどうとか持ち出す方がおかしい」と不愉快になる方も多いだろうが、これは別に筆者が言い始めたことではなく、「日本人みんな」がそういう認識だった。

2013年、東京五輪の誘致が決まった直後、安倍晋三首相(当時)は、「15年続いたデフレや縮み志向の経済を、五輪開催を起爆剤として払拭していきたい」と述べた。

これを受けて、アナリストや評論家も「五輪で景気回復」を煽り始める。わかりやすいのはAFPニュースの《2020年東京五輪で「日本経済復活の可能性」 アナリスト》という記事だ。