不安は生理現象

わたしたちが感じる不安な気持ちは、実は生理現象として生じる面があります。例えばトイレに行きたくなったり、お腹が空いたり、空気が乾燥すると肌がかさついたりするのと同じくらい自然な現象です。

忘れがちですが、脳も体の一部なので、生理現象はふつうに起こります。日光をあまり浴びなかったり、運動が不足したりして体内のセロトニンのバランスが少し変わるだけで、不安になってしまうのです。

こう考えると、たとえ気分が落ち込んでも、「最近ずっと部屋にこもっていたからセロトニン不足なんだな」「日照時間が減っているからだ」と、自分の状態を冷静に観察することができます。

逆に、落ち込んでいるときに無理に元気を出そうとしても、それでセロトニンが増えるわけではないため、余計に自分をダメに感じてつらくなるでしょう。

「ただ生理的に不安になっているだけ」という事実を、まず自分で理解する必要があるのです。

人間は、脳もホルモンも自在にコントロールできるわけではありません。不安な気持ちを感じるのはたしかに不快ですが、深刻に考えるのではなく、あくまで生理現象だととらえると、気持ちを落ち着かせることができます。

自分の不安を冷静に腑分けする

不安は生理現象だと書きましたが、そう簡単にとらえられない人もいると思います。でも、不安を解消できずにため込んでしまうと、日々の行動にも影響が出てしまいます。

そんなときは、まず自分の不安を「腑分け(解剖)」してみることをおすすめします。

「この不安はどこからくるものだろう?」と、いま感じている不安を一歩引いた目で見つめて、原因や理由を探してみるのです。

例えば、人前で話すのが不得意なのにイベントで登壇しなければならなかったり、馬の合わない人のところへ営業に行かなければならなかったり……。会社員なら、自分が苦手な人が上司になるケースもありますよね。

不安を分析するのは快い行為ではありませんが、思いきって一つひとつ対処の方法を考えていくと、ものごとは少しずつ前進します。

苦手な人が上司になったとしても、リモートワークならそれほど嫌な思いをせずに働けるかもしれないし、部署異動の希望を出してもいい。転職という方法もあるでしょう。

これは、不安に押しつぶされそうになっている人ですら、案外やっていないことかもしれません。

不安なときは、まず不安を「腑分け」して、自分なりにやれることをやっていく。問題が一気に解決しなくても、そんな行動ができること自体、すでに不安から足を踏み出している証拠なのです。

黒板に電球と頭のイメージを描いている写真
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