高齢者ほど副作用の危険性が大きい

病気になる確率が下がるだけでもメリットだと思う方もいるでしょう。

もちろん、そのメリットだけなら、私も憂慮などしません。

問題は、薬には大きなデメリットもあるということです。

薬には、多かれ少なかれ、必ず副作用があります。よく効く薬ほど副作用も強く出ますし、数が増えるほど副作用も大きくなります。高齢者の体は若いころと比べて代謝が盛んでないので、薬が体内に残りやすいということもあります。

これも、今の医療が見落としているポイントです。若い人とは薬の効き方がまったく違うことを考慮していません。そもそも、処方の根拠となる正常値・異常値が、高齢者と若い人とで同じになっているのもおかしな話です。

そうしたおかしさを、まずは患者が知っておくこと。これが肝要です。

薬を手にする人のイメージ
写真=iStock.com/Vladimir Vladimirov
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意識障害は意外と頻繁に起こる

意識障害とは、意識の状態や覚醒度が、普段と違う状態のことを意味します。いわば、「寝ぼけたような状態」です。

眠っている人に声をかけて起こしたときに、普段とは違ういい加減な返事をしたり、まったく無関係なことを言ったりして、それでいて翌朝にはまったく覚えていない、ということがありますね。これが意識障害です。

実は臨床現場では、意識障害はそう珍しいことではありません。

たとえば「譫妄せんもう」という状態があります。高齢の入院患者によく見られるもので、入院や手術といった環境の変化のほか、薬物、感染、炎症などによって意識の混乱が起こることです。大声を出したり、暴れたり、ほかの患者さんの点滴の管を抜いたりといった例もありますが、通常は1週間以内に収まります。

意識障害は、認知症と違って、一時的なものです。とはいえ、意外に頻繁に起こっているものでもあります。

入院していない普段の生活のなかでも、譫妄は、世の中で知られている以上に、よく起こっています。突然わけのわからないことを言ったり、暴れたりして、家族があわてて病院に連れて行くと、「認知症ではなくて譫妄ですから、すぐ収まります」と言われる、といったことがあるのです。実際、数分で収まることもあります。