風邪薬、胃腸薬にも譫妄の副作用がある

意識障害は、なぜ起こるのでしょうか。そして、防ぐ方法はあるのでしょうか。

私は臨床の経験上、もっとも大きな原因は薬だと見ています。

医療従事者が取り扱う薬のなかに、「譫妄の副作用があるので、注意して処方すべし」とされているものはたくさんあります。睡眠導入剤としても使われる精神安定剤が効きすぎたときや、「ハングオーバー」と言って、前日飲んだ睡眠薬が残ったときにも、意識障害が起こります。

パーキンソン病の治療薬もそうです。この薬にはドーパミンを増やす作用がありますが、ドーパミンは幻覚妄想の原因物質とも考えられています。

そのほか、風邪薬に使われる抗ヒスタミン薬、ステロイド、H2ブロッカーと言われる胃腸薬などにも譫妄の副作用があります。

だるさが続いたら、薬を減らすことを検討すべき

年齢が進むほど、薬物の影響を強く受けるようになります。その理由は、脳が老化して薬に弱くなっていることと、体が老化して薬が体内に残りやすくなっていることです。加齢とともに、肝臓で薬を分解する能力は落ちます。腎臓の排泄機能も衰えます。結果、薬の「半減期」が長くなるのです。

半減期とは、服薬直後にピークとなっている薬の成分の血中濃度が、半分になるまでの時間のことです。たとえば、精神安定剤「ジアゼパム」の半減期は、若いころは20時間程度ですが、70歳になると70時間と、3.5倍に伸びます。

急激な血圧や血糖の低下も意識障害を引き起こします。

ということは、血圧を下げる薬や血糖値を下げる薬にも危険があるわけです。

残念ながら、医者は薬を処方するとき、「今の年齢だと半減期が若者の3.5倍だから、3.5分の1の量にしましょう」などとは言ってくれません。しかし、薬を飲み始めてからボンヤリとだるい感じが続いていたり、意識が遠のくような感じがしたことのある方は、薬を減らすことを真剣に検討しましょう。