採算度外視でトップクラスのスタッフに依頼する理由

先行投資に話を戻します。

K-PROでは、音響さんや照明さん、また映像に関しても昔から売り上げを考えずにお金をかけてきました。

今でこそ当たり前になっていますが、うちは初めて300人規模のライブをやった2008年、「北沢タウンホール」の『行列の先頭』から、全て当時のトップクラスのプロに頼んでいました。

当時「北沢タウンホール」でやっていた別の団体が主催しているライブを勉強のために見に行ったときに、舞台照明を地明かり(もともと吊ってある照明)だけでやっていて、ずっと薄暗かったんです。それを見て、「うちは絶対、ちゃんと照明を当てたい」と思い、実行しました。地明かりだけでやると、照明さんを呼ばなくてもいいので、その分費用が安く済みます。でも、照明はライブの核となる部分ですし、そこの予算を削るのは違うと思い、K-PROでは、照明の演出をしっかりすることを心掛けています。

また、お笑いライブは特殊で、音響照明のきっかけが事前提出ではなく、本番当日に芸人さんから直接聞いてやることが多々あったりします。

これは、演劇や音楽ライブでは考えられないことです。各公演の合間しか合わせる時間もないですし、対応できない方や、場合によっては「こんな無茶苦茶な現場は初めてだ!」と怒り出す方も沢山いらっしゃいます。なので、うちのライブの音響さんと照明さんは、毎回「お笑いライブ経験者」にやってもらっています。「K-PROの音響照明は安心して見ていられる」という声を、嬉しいことに沢山いただきますが、それは経験者を呼んでいるからなんです。

ステージ照明
写真=iStock.com/kynny
※写真はイメージです

高い先行投資でも後々必ず回収できる

そのイメージがあるので、お客様もですが、特に芸人さんが安心してくれて、K-PROのライブには普段はあまりやらない音を沢山使うネタを持ってきてくれたりして、その分幅が広がります。

音響さんにも照明さんにも無茶なことをお願いしているので、やはり通常より値段が高かったりしますが、そこで勝ち得た信頼によって、「このチームでやってほしい」と単独ライブのオファーがくることもあります。また、うちの劇場の「ナルゲキ」や小さめの劇場で公演するときは、音響照明のオペレーターは自社のスタッフにやらせているので、大きめの会場で開催する際にプロの技を間近で見ることができるのは、とても勉強になります。高い値段を払っても後々に回収できる部分が沢山あるんです。

ライブ映像も、K-PROを始めた当初から、芸人さんの単独ライブのオープニング映像を作っていたプロの映像作家さんにお願いするなど、先行投資をしてきました。チケットの値段に見合った映像は演出として必須だと思いますし、何より芸人さんのテンションにも関わるので、今もここぞというライブは、プロの方に毎回お願いしています。