夫に「10万円のお年玉」を渡す実父
たとえば、お年玉の額も「子どもにはあり得ないくらいの金額」がふたりの小学生の孫にそれぞれ与えられ、そのほかにゲームや自転車など本人たちからのリクエストに応じたプレゼントもついてくる始末。「父親は、義息子である夫にも『家族でおいしいものでも食べてきなさい』と10万円のお年玉を渡しています」。テーブルに並んだ料理も一流レストランのように豪華で、「お義父さんとお義母さんみたいな生活を送れるようになるには、オレの稼ぎじゃ一生無理だな。ごめんな、貧乏クジを引かせて」などと帰省するたびにJさんの夫は自嘲的な発言を頻発、夫婦間も数日はギクシャクした空気が流れるとのこと。
その後、Jさんの夫の実家に帰省すると、6人でひとつのこたつに入って全員で寄せ鍋を囲み、3000円ずつのお年玉をもらった後は「みんなで寝るスペースがないから」と解散になるという。「子どもたちはどちらも非日常的で新鮮な体験を楽しんでいますが、『パパのジイジとバアバはお金がないの?』と臆面もなく夫にたずねる子どもたちと、それに答えられずに黙って不機嫌になる夫の姿を見ると、なんともいえない気まずさを味わいます。とはいえ、私の実家の両親も孫の来訪を楽しみにしているので、『過剰に甘やかすのはやめてほしい』とは言えずにいます」。
「事前の対策」でメンタルへのダメージを減らす
コロナ禍がなんとなく落ち着いてきた今でも、じつは実家や義実家への帰省時のトラブル話は多い。取り返しのつかないような夫婦間の危機をもたらすことは少ないものの、メンタルにダメージを負うような出来事は生じるもの。だからこそ、事前に対策を練っておくことも必要だろう。
たとえば、CASE1のように「帰省したくはないけれど、避けられない」という状況の場合なら、温泉旅行やショッピングなど自分が楽しいと思える「ごほうび」と帰省をセットにするのも手。「義実家からの帰りにあそこに行こう」という楽しみがあれば、少なくとも心の支えにはなるはず。
CASE2やCASE3のように「帰省先との習慣が違う」という場合、まずすべきことは「無理に相手に合わせる」ことではなく「相手の好意に感謝すること」だ。相手がよかれと思って行動していることに対しては、とにかく感謝して、その気持ちを言葉や形でしっかりと伝えること。そのうえで、自分のできる範囲で少しずつ努力していくほうがストレスは軽減できる。
CASE3のようなシチュエーションで子どもに伝える必要があるのは、「環境は異なっても、愛情は公平である」ということだろう。できあがってしまっている大人の価値観を変えようとするより、子どもに多様性を学ばせる機会ととらえたほうが帰省することにも意味を見出すことができるようになるからだ。