レトリックの危険性を知ったうえで正しく使えるか

この議論は結局、パイドロスが押し切られるようにして終わるのですが、私たちにとって重要なのは、プラトン自身もまた、レトリックが持つ「人を酔わせる、動かす力」については、これを素直に認めているという点です。

山口周『武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50』(KADOKAWA)
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言うまでもなく、組織のリーダーであればフォロワーを「酔わせ、舞い上がらせる」ことが求められる局面もあるでしょう。そのようなとき、レトリックの危険性を知った上でこれを用いることができるかどうか。是非の問題はともかくとして、レトリックにはそのような危険性もまたあるのだということは知っておいた方がいいでしょう。

アリストテレスという人は、いろんな意味でプラトンという師匠に対してケンカを売った人ですが、師匠筋が「危険だ」と指摘したレトリックを、全3巻にもなる方法論として、師匠以上に洗練させたというのは、オビ=ワンとアナキンの関係を見るようで切ないものがあります。

危険性を含めて「弁論術」は知っておくべき

スピーチを学校で習う機会が少ない日本では、アリストテレスの「弁論術」を学ぶ機会はほとんどありませんが、スピーチが重要な社会的役割を果たしている欧米社会の知識階層においては、当然の教養の一つになっています。

盲目的な欧米礼賛をするつもりはありませんが、人を動かすためには「ロゴス」「エトス」「パトス」の三つが必要だというアリストテレスの指摘については、その過剰な使用がもたらす危険性も含めて、リーダーという立場に立つ人であれば知っておいて損はないと思います。

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