サービスを生み、ビジネスモデルを生む
――この10月、第3弾、業務用サーバー『nomiigo(ノミーゴ)』を発表しました。
『nomiigo』は、サーバーに常温の『ザ・プレミアム・モルツ』350ml缶をセットするだけできめ細やかな泡の、よく冷えた生ビールをサーブすることができます。製品として売るのではなく、飲食店様への貸与、つまり、サービスを提供するわけです。場所を取らず、イニシャルコストも低いため、これまで樽生サーバーを置けなかった食堂やファストフード店、ラーメン店など、幅広く展開したい。
今回、製品の開発にとどまらず、サービスの領域に入ることができた。製品からサービスを生み、サービスからビジネスモデルをつくる。これはイノベーション部だからこそできたことです。
かつてウイスキーがそうであったように、ビールは今、本当に苦しい市場です。「ここまで落ちるのか」「ここまで飲まれないのか」と……。しかし、落ち続けていたウイスキー市場は『角ハイボール』で反転した。
当時、私はスピリッツ部門におり、営業の仕事をしていました。当初「角ハイボール」は、社内で大反対を受けていました。「ウイスキーをジョッキで? 氷を入れる? ご丁寧にレモンまで入れるのか?」と。それでも説得を進め、私たちは1軒1軒お店を回りながら提案。お店で売れて、『角ハイボール缶』を出したらまた売れた。『角ハイボール』は、常識外れの提案でした。それを、ウイスキーのリーディングカンパニーがやったことに意味があった。
ビール市場全体は今厳しいですが、幸い、サントリーのビール事業は好調です。勢いのある今、「そんなことやっていいの?」という提案をすることで、ビール市場全体を盛り上げていきたいと考えています。
(構成=大竹 聡 撮影=黒坂明美 図版作成=大橋昭一*グラフは編集部調べ)