人間は計画の達成にかかる時間を短く見積もる傾向がある

〈長期目標のワナ②〉1年でできることを過大評価しすぎる

1年でできることは限られています。

もともと人間は、かかる時間に関して楽観的に捉える傾向があります。

「5日あれば終わると思ったのに!」と、宿題の計画倒れによって最後に苦しむことになる、夏休みの風物詩がまさにそれです。

1979年に、行動経済学者であるダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーが「計画錯誤(Planning Fallacy)」を提唱しました。これは、計画の達成にかかる時間を実際よりも短く見積もる傾向のことを言います。

それが1年ともなればどうでしょうか? 余計に、予測と現実に大きな隔たりができるのは当然でしょう。

また、世界的名コーチと称されるアンソニー・ロビンスの名言に「人は1年でできることを過大評価しすぎる。そして10年でできることを過小評価しすぎる」という言葉が、あります。

できれば楽な方法で、しかも早く結果を出したいと思うのが人間の性でしょう。「3カ月でマイナス10キロ!」「3カ月でTOEIC900点!」「3カ月で月商7桁!」なんて謳い文句があるのも、それを魅力的に感じる人が多いからです。

しかし、焦って結果を出そうとしても、現実はそんなに簡単ではありません。1年では難しいのです。でも、10年と続けていたら大きく変化できます。

ネガティブな理由から生まれたモチベーションは続かない

また、人は今抱えている不満を解消しようと、あれもこれもと1年の目標に詰め込んでしまう傾向があります。不満を起点に目標を立ててしまうと、そのあれもこれもが、実は人生において重要度が高くない場合もあるのです。

例えば、残業が多い会社に不満があったので、「会社を辞めて週3日だけ働いて毎月100万円以上稼ぐようにする!」というような目標を立てて、実行したとします。

その結果、毎月100万円以上稼げることを優先したため、自分には向いていない仕事をしなければならなくなったり、残業が多くても人間関係は良好で助けられていたんだと後悔するようなことになります。

せっかく目標を立てても、本当に大事ではないことに追われてしまっては、時間がもったいないですよね。

しかも、ネガティブ起点の行動は、瞬発力があっても長くは続きません。だから結局は、何も達成することなく時間だけが過ぎていくという事態に陥りがちです。また、自分の人生(ビジョン)のために本当に達成すべきかどうか自分に問うてみたら、そうでもない場合もあるのです。だからこそ、あれもこれもと詰め込む前に「本当に必要か?」と自問してみてください。