「男性は家計を支えるべき」が40%以上

こうした現象は、日本だけの特殊なものではなく、アメリカでも同様です。経済学者のギヨーム・ヴァンデンブルック氏らのレポートにおいても、既婚男性だけが突出して年収が高く、未婚男女および既婚女性は同程度という結果を報告しています。

アメリカの場合、2016年のデータによれば、既婚男性は40代半ばで年9万ドルを稼ぐようになり、未婚男女と既婚女性はそろって年5万ドルですから、既婚男性の年収はその他のグループの1.8倍になることが示されています。

そう考えると、逆になぜ既婚男性の年収だけが高いのか? という話になります。

「結婚できる男性は年収が高いから」という結婚の因果とからめて推論しがちですが、むしろ「結婚した男性は稼がざるを得なくなる」という見方もできるでしょう。

図表1に戻っていただければわかる通り、出産や子育てにおいて退職または仕事をセーブすることになる妻の分も稼がないといけないからです。

内閣府男女共同参画局による「令和4年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究」の結果によれば、「男性は仕事をして家計を支えるべき」という項目に関し、男性は20代で44%、30代で43%、40代で44%と高い割合を示しています。

ミーティング中の3人のビジネスパーソン
写真=iStock.com/Yagi-Studio
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既婚男性ほど家庭よりも仕事を優先している

対して、20~30代女性は男性より少し低いものの40代女性では46%とむしろ男性より高い値となっています。これらは未婚者も含む数字なので、既婚者だけに限ればもっと高いかもしれません。要するに、男女ともに「男が家計を支えるべきだ」と考えている割合は少なくないわけです。

同じ男性でも、未婚と既婚の意識の違いでいえば、内閣府の「令和4年度 新しいライフスタイル、新しい働き方を踏まえた男女共同参画推進に関する調査報告書」に、仕事とプライベート・家庭生活のバランスの現実について配偶状況別に比較したものがあります。

それによれば、未婚(調査では独身)と既婚(調査では有配偶)の男性において、「仕事に専念」および「仕事を優先」する割合の合計は、独身男性が20代から50代まで36~37%であるのに対し、有配偶男性は30代で45%、40代でも42%と、プライベートや家庭生活より仕事を優先する傾向が高いのが特徴です。

実際に、労働時間を未婚男性と既婚男性で比較しても、既婚男性のほうが1.3~1.4倍ほど働く時間が長くなっています(2022年就業構造基本調査)。単純に若いうちから働く時間も長く、仕事に邁進することで、管理職や出世を遂げて、結果として未婚男性より大きく年収をあげることになっているのかもしれません。裏を返せば、夫や父である以上、稼がないといけないということです。