担当者に言わせれば「無垢むくな自治体を食い物にするハゲタカ業者が巨額の税金をかすめとっている」となる。つまり、全国では1500億円にも上る税金が、ふるさととは無縁の仲介サイト業者の懐に収まってしまっているのだ。ふるさとへ寄付したつもりの利用者にすれば、実に不快で由々しき問題と言わざるを得ない。

仲介サイト業者への巨額流出は、当初の制度設計では想定していなかったとみられるが、制度の抜け穴であり、放置しておいていいはずがない。

「金持ちが得をする制度」は欠陥

次に③について。

ふるさと納税における住民税の控除の上限(寄付金の実質的な上限)は、2割の定率のため、高額所得者ほど寄付の上限額が飛躍的に大きくなる。

ちなみに、22年の世帯平均年収546万円(厚生労働省・国民生活基礎調査)の場合、上限額は概算で6万円(夫婦の場合、家族構成により異なる、以下同じ)になる。

もっとも多いのは年収200万~300万円世帯だが、300万円世帯の上限額は概算で1万8000円だ。

これに対し、年収が1000万円なら約17万円、1500万円で約40万円、2000万円で約56万円、3000万円は100万円余り、5000万円になると200万円を超す寄付ができてしまう。寄付額の3割は返礼品となって戻ってくるので、その分が実質的な節税となる。

逆進性がきわめて高く、税の公平原則からみれば極端な不均衡が生じている。つまり、「金持ちほど得をする制度」なのである。当初から指摘されていた制度上の欠陥で、素直に受け入れられる利用者がどれほどいるだろうか。

④以下は、寄付金目当ての返礼品競争が招いた結果であり、自治体が税収を奪い合う構図は歪んでいるとしかいいようがない。

【図表2】令和4年度におけるふるさと納税受入額の多い20団体
出所=総務省自治税務局市町村税課「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和5年度)」

富裕層の節税に歯止めをかけるべきだ

では、どうするか。

制度上の欠陥や抜け穴は、根本的に是正しなくてはならない。

まず、手がけやすいところでは、寄付額の上限(税額控除の上限)を「定率」に加えて新たに「定額」を設けることだろう。

約1000万人の利用者が約1兆円を寄付している現状から計算すると、1人当たりの平均寄付額はざっくり10万円。これは、年収約700万円の世帯の上限額に相当する。2割の上限率はそのままで、上限額としてたとえば10万円を設定すれば、全世帯の7割を占める年収700万円未満の世帯には影響がなく、一方で、節税にいそしむ高額所得者の多額寄付に歯止めをかけることができる。そうすれば、庶民の怨嗟の声も少しは鎮められるかもしれない。

寄付総額は一時的に減るだろうが、だからといって高額所得者に配慮する必要はまったくない。利用者のすそ野は広がっており、伸びしろもたっぷりあるだけに、数年単位でみれば、ふるさと納税市場は活性化していくだろう。