税収の少ない地方自治体が自由に使える寄付金で少し財源が潤い、販路が限られていた地場産業は返礼品需要で少し活性化し、ふるさとに貢献したくてもなかなかできなかった利用者が少し満足感を味わい返礼品まで受け取って少し得した気分になるという、「三方よし」の制度といえた。

もともと「善意の寄付」を想定していたので、当初は、利用者も寄付額もささやかで、寄付を受けた自治体も礼状を出す程度のほのぼのとしたものだった。

知る人ぞ知る制度で、11年に東日本大震災で被災自治体への寄付が急増したものの、しばらくの間は、寄付者は10万人余り、総額も100億円余りで推移していた。

ふるさと納税
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寄付金の獲得競争が全国に広がった

ところが、地場の特産品を返礼品としてふるさと納税を募る自治体が現れるようになり、その動きはやがて全国に広がって寄付金獲得の競争が始まった。

いつのまにか、寄付金を集めること自体が目的化し、もともとの狙いが変質していったのである。

そして2015年。寄付できる金額の上限が倍増(住民税控除額の上限を1割から2割に引き上げ)し、確定申告が不要となるワンストップ特例の導入で手続きが簡略化されると、事情が一変する。

ふるさと納税がにわかに注目を集め、利用者の意識も様変わり。返礼品が税金の還元策になることがわかると、自らのふるさとへの貢献など置き忘れ、ネットに並ぶ返礼品の品定めに血眼になった。高額返礼品を受け取り実質的な節税にいそしむ高額所得者の姿も目立つようになった。

寄付者は100万人を超え、寄付総額は一気に1500億円規模にまで膨れ上がった。

そうなると、利用者の関心を誘うためには地場の特産品だけでは足りず、地場産業以外の返礼品や地場産業とは関係のない商品券や金券まで提供する自治体も現れ、「寄付金争奪戦」はますますエスカレートした。

仲介サイト業者が続々と参入

とはいえ、ビジネスとは無縁の地方公務員が、十分な実務のノウハウを持ち合わせているわけもない。

そんな事情に目をつけたのが、ネット通販などに長けている中央の民間業者だった。最初に仕掛けたのはベンチャーの「ふるさとチョイス」で、IT企業アイモバイル系の「ふるなび」、ソフトバンク系の「さとふる」、「楽天ふるさと納税」の楽天など、大手業者が続々と「ふるさと納税サイト(仲介サイト)」事業に参入した。本来、自治体が行わなければならない実務を、業務委託として請け負い、仲介手数料を得るなど、さまざまな形で全国の自治体に関与していったのである。