長引くと元には戻れない“高血糖の呪い”

「血糖上昇曲線下面積」という言葉がある。縦軸が血糖値、横軸が生きてきた年数としよう(図表1)。どんな人も食事によって血糖値が上下するので波線になるが、血糖値上昇の山が大きいほど波線以下の面積が広くなる。この面積が大きい人ほど「老化が進む」と山岸氏は強調する。

【図表1】血糖上昇曲線下面積
出所=『老けない最強食

「一度蓄積されたAGEは、その後血糖値が下がっても長期にわたって組織にとどまり続けます。これまでの研究で、6年間高血糖状態が続いた人たちが、7年目から血糖コントロールを始めても、最初から血糖コントロールを行った人と比べて30年後の死亡率が高いと報告されています。

またその6年間に本当にAGEが蓄積されているのか、患者さんの皮膚を採取して調べると、やはりたまっている。私はこれを“高血糖の呪い”と表現しています。時間の枠で考えると、例えば血糖値が300mg/dlは良くない数値ですけれども、それが5日で済むのであれば、200mg/dlの血糖値が5年続くよりもマシということです」

糖尿病患者以外でも、AGEが蓄積された人は寿命が短いという大規模研究もある。

これは糖尿病や心臓病のない一般住民7万人以上を対象にしたもので、AGEが蓄積されたグループは将来糖尿病や心臓病に3倍かかりやすく、また死亡のリスクが5倍に跳ね上がることが明らかにされた。

認知症やがんなどの引き金にもなる

AGEは「炎症」とも縁が深く、認知症やがんなどの重大な病気の引き金にもなる。炎症には、大きく分けて急性炎症と慢性炎症の二つがあるが、ここでは一時的では治まらず、同じ場所で長期間続く慢性炎症を指す。

例えばアレルギーでいつも鼻の調子が悪い、持病の関節炎がある、歯周病で歯茎が腫れるなどの場合だ。同じ場所で炎症が繰り返し起きると、その部分の組織の状態が劣化し、老化あるいは病気の状態に近づく。AGEは細胞を刺激してサイトカインを発生させ、そういった慢性炎症を引き起こすのだ。

糖尿病を始めとする生活習慣病の患者をのべ20万人以上てきた牧田善二医師(AGE牧田クリニック院長)がこう補足する。

「AGEは体に害のある老化物質ですから、白血球の一種のマクロファージが取り除こうと働きます。その時、炎症が起きるのです。加齢とともに酸化と同様、糖化も起きやすくなり、体内にAGEがたまる可能性は高くなります」

皮膚に蓄積されたAGEを測る医療機器(AGEリーダー)もある。インターネットで「AGEリーダー導入施設」と検索すれば、測定できる施設がわかるので興味のある人は測ってみてもいい。ただし保険適用でないため、費用は施設によって異なる。

医師と患者
写真=iStock.com/ibnjaafar
※写真はイメージです