糖化はタンパク質を劣化させてしまう

もう一つの「糖化」とは「血中にあまったブドウ糖(糖質)が、体の重要な構成因子であるタンパク質にくっつく現象のこと」だ。山岸氏が続ける。

「その結果、タンパク質が劣化してしまうのです。これを糖化反応といい、老化を促進するAGEという悪玉物質ができてしまいます。糖化が初期の段階であれば、タンパク質は元の形に戻ることができますが、糖化が長期間続くとタンパク質は劣化、変性し、AGEとなって元の正常な形のタンパク質に戻れなくなってしまうんです。

体のタンパク質のおよそ3割はコラーゲンで占められている。みなさんがよく聞く皮膚だけではなくて、血管や目、骨、軟骨、脳などあらゆるところに存在しています。このコラーゲンが糖化し、AGE化すると、骨がもろくなったり、動脈硬化や白内障、変形性関節症などさまざまな機能障害が起きてしまいます」

骨にAGEが蓄積すれば骨が老化して折れやすくなり、肌の奥にAGEがたまれば、コラーゲン繊維の機能が低下して硬い皮膚になったり、シワが刻まれやすくなる。最近では薄毛の原因にもなることがわかってきた。

老化の促進にとどまらず、AGEが蓄積されるほど、病気になりやすく寿命が短くなることも多くの研究で報告されているのだ。

問題は「高血糖の高さ×持続時間」

体内でどういう時にAGEがたまりやすいかといえば、血液中に糖がたくさんある=血糖値が高い時。誰しも食事をすれば血糖値が上昇し、膵臓すいぞうから分泌されるホルモンでブドウ糖を細胞の中に取り込ませる。しかし、急激に血糖値が上昇しすぎたり過剰に糖を摂取すると、その働きが追いつかず、血液中に糖があまって高血糖状態になる。この時、AGEも大量に発生するというわけだ。

高血糖状態は糖尿病を引き起こすし、また糖尿病患者は慢性的に高血糖が続くことから、AGEがたまりやすくなる。

「糖尿病患者さんは心血管系疾患、がん、認知症などの老年病の発症リスクが高まり、老け顔になって、寿命が短くなります。けれどもたとえ糖尿病患者さんでも血糖コントロールをしっかり行うと、AGEの蓄積が抑えられ、老化を防げることがわかっています。

ただしここで問題となるのが、高血糖の程度×持続時間です。“今までの血糖値がどれほど高かったか”というのが将来の寿命の決め手なのです。すなわち、ケアしなければいけないのは、血糖値の高さだけではなく、血糖値が高い状態がどれくらいの時間続いたかなのです」(山岸氏)