健康情報は少し距離を置いて受け止める

しかし、万人に効果がある健康法などあるはずもないわけですから、いっこうに効果が見られないことも、当然ながら起こります。それが悩みにもなるのです。

「一生懸命取り組んでいるのに、ちっともせない(健康にならない)なんて、やり方が間違っている? それともどこか自分だけに欠陥があるの?」という具合です。

いくらテレビが権威付けをしようと、情報はあくまで「One of Them」でしかないのです。

これは絶対に押さえておく必要があります。そうすれば、効果がなくても、「たまたま、私には合っていないのだ」と受けとめられますから、悔やむこともないし、悩みにつながることもありません。

私も医師ですから、健康法やサプリメントなどについてコメントを求められることがあります。先方が“推薦の弁”がほしいことはわかっていますが、私の答えはこうです。

「いい(自分に合っている)と感じる人もいるでしょうし、そうでない(合っていない)と感じる人もいるでしょうね」

相手は怪訝けげんそうな表情を浮かべますが、それが正直なコメントです。

テレビと違ってインターネットでは、さまざまな情報が発信されます。それがネットメディアの特徴ですし、取り柄といってもいいところだと思います。

ですから、いろいろな考え方があるな、いろいろなやり方があるな、というスタンスで見るのが、ネットメディアを活用する基本でしょう。

少し距離を置いて情報を受けとめ、自分が興味をそそられるもの、自分にふさわしいと思われるものがあったら、それについては改めて詳しい情報を集めてみるのがいいですね。

ダイエットのための巨大なシェーカーで作った飲料を手にしている女性
写真=iStock.com/PonyWang
※写真はイメージです

わからないときは実験する

先に述べたように、自分がゲットした情報が正しいか、正しくないか、自分に合っているか、合っていないかはわからないものです。

イスラム教などの発想では、わからないのだから、運命(神の思し召し)にまかせようということになるわけですが、これは一般的とはいえません。

そこで出てくるのが、わからないなら実験してみる、という発想です。

たとえば、身体にいいとされるサプリにしろ、食品にしろ、実際に試してみる。その結果、体調がよくなったり、不調だったところが改善したら、続ければいいのです。

逆に試してみたら下痢げりをしてしまったとか、蕁麻疹じんましんが出たとか、よくない変化があったら、やめればいい。

人は個人で体質も違いますし、心理的な要因も“実験結果”に影響しますから、試してみないことにはわからないのです。

医師が患者さんに薬を処方する場合も考え方は同じです。

患者さんが頭痛を訴えている場合でも、頭痛の種類によって効く薬は違います。肩こりからくる筋緊張性頭痛であれば、筋肉をやわらかくする薬がいいし、偏頭痛ならそれ用の特効薬があります。

医師は頭痛がどのタイプかを見極めながら、一番効くと思われる薬を処方するわけです。

しかし、当然、たてが違うということもある。その場合は、別の薬に切り替えて様子を見ます。そのように“試して、結果を見る”ということを繰り返しながら、一番有効な薬を見つけていくのです。

ただし、医師のすべてがこの手法をとっているわけではありません。

最初に処方した薬に意固地にこだわり、「これが効くはずだから、続けてください」というケースも、現実にはあるわけです。

患者さんとしては、薬をいくつも変えられると、「この先生、大丈夫?」という感じを持つかもしれませんが、実は患者さんと真摯しんしに向き合ったら、そういうことにならざるを得ないのです。