逃げられるか、逃げられないかを判断する

ビジネスパーソンは少なくても一日の3分の1の時間は職場に身を置いています。ですから、そこで人間関係の悩みを抱えると、それは深いものとならざるを得ません。

職場の悩みの最たるものは、上司との関係がうまくいかないことでしょう。

上司によるパワハラ、セクハラはその典型ですが、上司が正当な仕事の評価をしてくれない、ほかの社員を依怙贔屓えこひいきしている、上司に便利屋として使われている、といった状況も悩みの種になりそうです。

ここで、そうした悩みを解決するうえで重要なことがあります。それは、その悩みから逃げられるのか、逃げられないのかを判断すること。なぜなら、本当は逃げられるのに、逃げられないと思っていることが少なくないからです。

その視点で見れば、職場の人間関係の悩みは、どんなことであれ、本当は「逃げられる」ものでしょう。最終的には辞めればいい。解決策がそこにあることを心得ておくことが大事なのです。

ところが、案外、そのことは見落とされがちです。その結果、悩み続けることになります。すなわち、セクハラやパワハラを受けている場合、どうやってそれに耐えるか、ということばかりを考えてしまっているわけです。

いまはそれらを訴え出るセクションを設けている会社もありますし、公的機関に訴えることもできるわけですが、なかなかそういう行動に踏み切れないケースが多いのだと思います。自分の中に「逃げる」という選択肢が想定されていないからです。

行動につながる悩みは解決への道を切り開く

会社に居続けることが前提になったら、「訴えたりしたら、余計ひどい目に遭うんじゃないか」「周囲にセクハラをされていたなんて知られたら恥ずかしい」といった思いが先に立ちます。だから、悩んでばかりいて動けなくなるのです。

しかし、「逃げる」ことが視野に入っていたら、気持ちはずいぶん違ったものになりませんか?

「最後は会社とおさらばする手がある!」

和田秀樹『「すぐ動く人」は悩まない!』(祥伝社)
和田秀樹『「すぐ動く人」は悩まない!』(祥伝社)

これは大きな強みです。行動を促すバネにもなるでしょう。

繰り返しになりますが、行動につながる悩みは解決への道を切り開くのです。思いきって訴えてみたら、こちらの言い分が全面的に認められるかもしれないし、配置転換を申し出たら、あっさり受け容れられるかもしれないのです。

また、会社には定期的な人事異動がありますから、いつまでもその上司との関係が続くわけではありません。

それを見越して、しばらく耐えるにしても、「逃げ場がない」というギリギリの思いで耐えるのと、「いつでも逃げられる」と余裕を持って耐えるのとでは、気持ちが天と地ほども違うでしょう。

誰にでも「逃げる」という伝家の宝刀があるのです。それを心にとめておけば、どんな悩みにも積極果敢に向き合えるでしょう。

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