「親友は1人もいない、趣味も何もない」
だが、成人後のアンドリューが、調査ではほぼ毎回、幸福感や人生の満足度のレベルは非常に低いと回答していたのも事実だ。45歳のときには、深く絶望して自殺を図った。20年経っても、生きることは苦しみだった。質問票の余白欄に「人生を終わらせようと思ったことがある」と書いてきたこともあった。
60代半ばの調査では、親友の存在やその親友の意味を尋ねる質問に対し、「親友は1人もいない」と短く回答していた。趣味についての質問には、「何もない。仕事に行く以外はずっと家にいる」と書いていた。
67歳のとき、視力の低下により精密な作業ができなくなった。引退するしかなかった。引退して間もなく、生まれて初めて心理療法家のもとを訪れた。自分はひとりぼっちだと感じていること、引退するしかなくてとても悲しかったことなどを話した。自殺願望があることも打ち明けた。
思いつきで通い出したスポーツクラブでの出会い
心理療法家からは、離婚を考えたことはあるか、と訊かれた。離婚すれば妻を傷つけることになるから申し訳ない、と彼は考えていた。だが、この質問は彼の心を離れなかった。翌年、68歳のとき、籍は残したまま別居した。アパートで一人暮らしを始めた。
息苦しい結婚生活からは解放されたが、孤独感はさらに強くなった。ふと思いついて、近所のスポーツクラブに入会した。気晴らしに運動しようと思ったのだ。毎日通ううちに、来る日も来る日も同じ顔ぶれがいることに気づいた。ある日、常連の1人に挨拶し、自己紹介してみた。
3カ月後にはクラブの常連の全員と知り合いになっていた。人生で最大数の友人ができた。毎日クラブに行くのが楽しみになり、何人かとはクラブの外でも会うようになった。友人のうち数人とは、古い映画が好きだという共通点があるとわかった。そこで、集まってお気に入りの作品の上映会をするようになった。