2023年上半期(1月~6月)にプレジデントオンラインで配信した人気記事から、いま読み直したい「編集部セレクション」をお届けします――。(初公開日:2023年4月12日)
※内容は掲載当時のものです。
フランス各地で大規模なデモ活動が続いている。政府が、年金の受給開始年齢を62歳から64歳に引き上げる年金制度改革を強行しようとしているからだ。評論家の八幡和郎さんは「フランスでは仕事に人生の価値を見いだす人はほとんどいない。だから受給開始年齢の引き上げに強く反発している」という――。
英国王訪仏中止、パリ五輪も大丈夫か
来年夏にはパリ五輪・パラリンピックが開催されるというのに、フランスは年金制度改革をめぐって反対運動が盛り上がり、パリの中心部は大混乱に陥っている。暴徒化したデモ隊と警察隊との衝突が相次ぎ、ごみ収集や焼却場の従業員によるストの影響で街中がゴミだらけになったとも報道された。ムードとしては、1968年の五月革命に匹敵するような勢いで、革命前夜という趣だ。
タイミングの悪いことに、この4月はチャールズ英国王が、ブレクジットの傷を癒やすために最初の外交訪問先としてフランスを選び、ベルサイユ宮殿での晩餐会やシャンゼリゼでの式典も予定されていた。
だが、ホストであるマクロン大統領だけでなく、チャールズ国王までも攻撃すべき特権階級としてデモ隊の標的にされるのは避けがたく、うっかりすると人気低迷の英王室の廃止運動にまで火がつきかねない勢いであるために訪仏は中止され、ドイツが最初の訪問国となった。
それにしても、少子高齢化を受けて、どこの国でもやっている、年金支給開始年齢を2歳だけ上げるという程度のことで革命騒ぎとは穏やかでない。
どうして、フランス人たちがこれほど怒るのか、また、このフランスの騒ぎがもしかすると、世界的な大混乱の幕開けかもしれないという話をわかりやすく論じてみたいと思う。
※百年戦争の経緯からも分かるように、英王室はフランスのノルマンディー公がイングランドを征服したのが始まりだし、色濃くフランス王家のDNAも引き継いでいることは、新刊『英国王室と日本人 華麗なるロイヤルファミリーの物語』(篠塚隆と共著、小学館)で論じている。