勝間和代(かつま・かずよ)
1968年、東京都生まれ。経済評論家。現在、株式会社「監査と分析」取締役、内閣府男女共同参画会議議員、中央大学ビジネススクール客員教授。早稲田大学大学院ファイナンス研究科、慶應義塾大学商学部卒業。外資系会計事務所やコンサルタント会社を経て、独立。著作の累計発行部数は400万部に達する。

いったん「有名人」になったら「無名」には戻れない。多彩な人脈に恵まれる一方で、バッシングにさらされることもある。本書は、「有名人」になるための戦略と、なったあとの対策を、自らの経験を通じてまとめた一冊だ。こんな本を書けるのは、自他ともに認める「有名人」であると同時に、ロジカルに状況を整理して文章化できる人に限られる。となれば、この人をおいてほかにない。勝間和代さんである。自身も「まとめるのは得意ですし、ここ数年を振り返っておきたかった」という。

勝間さんにとって「有名人になること」は「プロジェクト」であり「ビジネス」だった。スタートは2008年。リーマンショックの影響で、仲間と立ち上げた投資顧問会社の経営が不透明になったためだ。

「なろうと思ってなれるのか、という疑問があると思いますが、なれます。有効と思ったことをすべてやってみればいいのです。チャレンジは確率論。じゃんけんと同じです。ただ、勝負を続ける人が少ないだけなんですよ」

その結果は周知の通りだ。ところが、並はずれて聡明な彼女でも、デメリットは想像を超えていた。見ず知らずの人から行動を監視され、ときには「嫌い」「気持ち悪い」といった言葉をぶつけられる。本書の白眉は、「キャラ売り」の失敗を認め、いまの自分がなぜ嫌われるのかを赤裸々に分析していく点だ。

「著書を読んでいない人たちが、なぜ中傷を浴びせてくるのか、わかりませんでした。貴誌のアンケート記事にも“嫌いな著者ワースト1位”と書かれました。でも、ブロガーのちきりんさんに『高い発射台からいまの場所に到達していることを自覚して』といわれ、納得したんです。努力が報われる恵まれた環境にいる人は、私の言葉に共感できると思っています。一方、さまざまな事情で努力が報われない環境にいる人たちは、私の言葉で傷つく。認知度が飛躍的に高まったことで、この間で軋轢が生まれたのでしょう」

ビジネス書では「著者」の話を専門のライターがまとめた「語りおろし」が少なくないが、本書は「丁寧に書く」というミッションを課し、自らの手で書き起こした意欲作だ。

「有名人になる気のない人にも読んでほしい。どんな組織にも『会社内有名人』はいます。出世や昇進で注目を集めたとき、どう振る舞うか。私を一方的に利用しようとする人はブームとともに去りました。残ったのはお互いに与え合える人たち。有名人であるかどうかは、関係なかった。そんな私の経験をシェアできればと思います」

(門間新弥=撮影)
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