就業時間内にチームワークを向上させる方法がある
では、どのようなアプローチが考えられるか。チームワーク向上のためにインフォーマルコミュニケーションを図るのもよいが、時間外の活用を前提とするのは難しい。したがって、一つには、就業時間内に部下とのインフォーマルコミュニケーションを深める工夫が有効だ。
そこで、以下に紹介する方法は、多様な部下とのチームワークを向上させるため、一人ひとりの持ち味が活きる役割を定義し、互いに協働することを明示する組織図づくりだ。
上司は部下一人ひとりに対し、チームの中で担う役割を任せ、業務分担をしているはずだ。そこで、これを上司と個々の部下のみにとどめず、チーム全員で共有し合うのだ。
[図表1]を参照してほしい。こうした“遊び心のある組織図”を作成するのも効果的だ。
営業第2課で入社11年目の中堅社員・渡部さんを例に取って説明しよう。今期、東部エリア担当の営業主任に抜擢された部下だ。本人との面談で上司の佐藤さんは、これまでの本人の活躍と希望を踏まえ、近い将来には営業第2課全体でのリーダーシップの発揮を期待すると伝えた。併せて、チーム全体では、次の上半期は全員で「お客さまの販売力30%アップで、自社売り上げ目標30%アップを達成しよう」との組織目標も共有済みだ。
仕事の節目、全員が参加しやすい飲みニケーションならアリ
上司は、新たなリーダーと期待する渡部さんに、「あなたならではの役割を担ってもらいたい」と強調する。渡部さんは、コツコツと顧客本位の提案営業を積み重ねてきたことで、お客さまからの信頼が厚く、社内でも豊富な知識や類いまれな営業センスには定評がある。また、上司や後輩との報告・連絡・相談(報連相)も丁寧で頼りにされる存在だ。
そうした自他共に認める「信頼関係づくりのプロ」としての強みを今後も十分に発揮して、渡部さんらしいリーダーシップで組織に貢献し、大きく成長してほしい。そのことを本人に伝えると同時に組織図にも明記し、チーム全体で共有するのだ。
同様に、他の部下一人ひとりについても、本人の仕事を組織全体の中に位置づけると同時に、本人のキャリア希望にもつながる仕事として動機づける。こうして、部下全員の活躍・成長とチーム全体の仕事のつながりを可視化して共有することで、チームワークは高まっていくのだ。
とはいえ、私は、部下一人ひとりの状況と気持ちに十分配慮した上で、仕事の節目に、全員が参加しやすい形式の飲みニケーションなら、一概に否定されるべきではないと考えている。上司の都合の押し付けではなく、部下たちが前向きになれる機会にできれば、みんなにとってプラスになるだろう。就業時間内におけるマネジメントの工夫で、チームワークを高めることをメインに据えつつ、部下やチームの状況に応じ、飲みニケーションもサブの手段として柔軟に活用すればよいのではないだろうか。