飲みニケーションのみに頼ることは控えるべき

そこで、あらためて問われるのが、職場の飲みニケーションの是非だ。前項のように、働き方や働く人たちの意識が変わってきた時代背景はあるものの、本音では「チームワークをつくるには飲みニケーションも必要だ」と考える上司も少なくないのではないか。実際、私の会社が開講する「上司力研修」でも、ただでさえ効率が重視され多忙な毎日が続く中、飲みニケーションもご法度となると、部下とじっくり腹を割って話すことは難しいとこぼす管理職は少なくない。

しかし、ダイバーシティが進む今日の職場では、上司がまだ駆け出しだった頃と同じように、上司と部下の信頼構築の手段を飲みニケーションのみに頼ることは控えるべきだろう。

その理由は四つある。第一は、育児や介護、障害や疾病などを抱え、時間的制約のある人が増えている以上、時間外の活動を前提としない働き方を基本とすべきだからだ。残業も極力なくすことが求められる中、飲みニケーションを控えるべきであることは言うまでもないだろう。

サラリーマンと時間のイメージ
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モチベーションの低迷や早期離職にもつながりかねない

第二に、前項で触れたように、若手世代に多い時間外まで拘束されてプライベートな時間を奪われたくないとの感覚を尊重するのが、時代の流れであるためだ。上司からは私生活上の制約が少ないと見える新社会人であっても、上司世代の仕事中心の価値観を押し付けるようでは、モチベーションの低迷や早期離職にもつながりかねない。

第三に、副業や兼業解禁の流れの中で、複数の仕事を持つ社員が増えつつあるからだ。本人にとっては、この職場での終業時間は、次の仕事の準備や始業の時間ということもあり得る。おのずと時間外に職場にとどまる余裕はない。

第四に、キャリア自律が重視される時代のためである。部下が自己啓発やリスキリングに励む時間への配慮は、人的資本経営を進める上での必須要件だ。

以上のように、飲みニケーションはもはや通用しないとの認識が浸透している。異なるアプローチで、部下との信頼関係やチームワークづくりに取り組まなければならないと考える上司も多いだろう。