CO2を90年比127%削減する方法

08年の発電電力量に占める石炭火力のウエートを国別に見ると、日本が27%であるのに対して、アメリカは49%、中国は79%、インドは69%に達する。発電面で再生可能エネルギーの使用が進んでいると言われるドイツにおいてでさえ、石炭火力のウエートは46%に及ぶ。世界の発電の主流を占めるのはあくまで石炭火力なのであり、当面、その状況が変わることはない(08年における世界の電源別発電電力量の構成比は、石炭が41%、天然ガスが21%、水力が16%、原子力が14%、石油が6%、その他が3%であった)。

国際的に見て中心的な電源である石炭火力発電の熱効率に関して、日本は、世界トップクラスの実績をあげている。したがって、日本の石炭火力発電所でのベストプラクティス(最も効率的な発電方式)が諸外国に普及すれば、それだけで、世界の二酸化炭素排出量は大幅に減少することになる。

資源エネルギー庁の試算によれば、中国・アメリカ・インドの3国に日本の石炭火力発電のベストプラクティスを普及させるだけで、二酸化炭素排出量は年間13億4700万トンも削減される。この削減量は、90年の日本の温室効果ガス排出量12億6100万トンの107%に相当する。

日本の石炭火力のベストプラクティスを中米印3国に普及させさえすれば、鳩山元首相が打ち出した「25%削減目標」の4倍以上の温室効果ガス排出量削減効果を、20年を待たずして、すぐにでも実現できるわけである。この事実をふまえれば、日本の石炭火力技術は地球温暖化防止の「切り札」となると言っても、決して過言ではないのである。

もしIGCCが実用化されるとすれば、日本の石炭火力のベストプラクティスを中米印3国に普及させた場合の二酸化炭素排出量削減効果は、さらに拡大する。図3にある通り、国産酸素吹きIGCCの技術を移転すれば、1年間に、アメリカで4億9400万トン、中国で8億6200万トン、インドで2億4400万トン、3国合計で16億トンの二酸化炭素排出量を減らすことができる。この16億トンという数値は、90年の日本の温室効果ガス排出量のじつに127%に相当するのである。

(平良 徹=図版作成)
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