昔から断るのが下手だった。相手を一生懸命手助けした結果、無理が祟って災いと化すことが少なくなかった。東京・上野で毎年開かれる音楽祭の実行委員長を務めているが、ここへの個人出資を断っていれば、今頃は豪邸に住んでいたはずだ。今は年を重ね、断るのも少しはうまくなった。

断る際に大切なのは、「入り口」を厳しくすること。応援したいという思いが最初に言葉や態度に混じっては足元を見られることになる。頼む側はこちらの言葉を自分に都合のいいように解釈しがちだ。

出資の話は十中八九が相手にするまでもないレベル。ストレートに「事業になるわけがない」と告げればいい。就職の依頼の場合はもっと早い。相手に「出来が悪いからダメ」と言うのも手間なので、会わずに「もう締め切った」と連絡する。それを見越して早い時期に頼みに来る連中には、「権限がない」と言うことにしている。