「空気を運ぶ率がどんどん高まっているんです」

「ドライバーの労働環境を改善しようと言いながら、空気を運ぶ率がどんどん高まっているんです」と大手運輸会社のトップは語る。トラックがどれだけ荷物を積んで走っているかを示す指数を「積載率」と言う。行きは満載でも帰りにカラで走れば50%ということになる。国土交通省の調査では1990年に積載率は55%だったが、2009年には40%に低下、今もほとんど上昇していないと見られる。

「極端な話、荷物ひとつでも届けなければならないケースがある」と中小運輸会社の社長は言う。荷物を依頼する「荷主」の力が圧倒的に強いことが背景にある。輸送を受注しているのが大手運輸会社でも、実際に運んでいるのは下請けや孫請けの中小零細運輸会社であることも少なくない。「荷物の量がまとまってから運びますなんて到底言えない」と社長氏はため息をつく。

大手運輸会社では、ITシステムを使って、荷物の行き先を管理し、荷物を組み合わせることで積載率を上げる取り組みが始まっている。大手どうしで荷物をやりくりして、効率を上げる試みも進む。だが、結局、荷主の協力がなければ効率化は難しい。荷主の後ろにいる消費者のマインドを根本から変えないと、状況は改善しないわけだ。

配達員が荷物を手渡し
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本格的なドライバー不足時代の入り口

現在84万人ほどの人がトラックドライバーとして働いていると見られる。過去10年間は微増から横ばいだった。2024年問題で労働時間が減った場合、これまで通りの報酬が得られなくなることから、今後、ドライバーを辞める人が増えるのではないか、と見られている。ひと昔前、体力のある若者が手っ取り早く稼ぐにはトラックドライバーが選ばれた。長時間労働を厭わずにモノをたくさん運べばそれだけ稼ぎが増える。価格競争の中で収入を増やすには運ぶ回数を増やすしかない。これが、過労死を生む業界慣行だった。これが中小規模の運送会社を乱立させ、過当競争を生む要因にもなってきた。

最近は若者よりも高齢のトラックドライバーが目立つ。4割が50歳以上と言われて久しい。今後、労働時間が減って所得も減るということになれば、若者がますます入って来ない業種になる可能性はある。そうなると、本格的なドライバー不足時代になる。2024年問題はその入り口にすぎないとも言える。

来年以降、こうした業界慣行は変わるのだろうか。運ぶ速さを選ぶなら料金は割高になっても仕方がない、と企業も消費者も割り切ることができるのか。