NHKと大手事務所との「黒い噂」

ところが、この紅白歌合戦の人選の不透明さがしばしば物議をかもしてきた。ちなみに、ジャニーズ事務所からは例年5~6組が出場しており、昨年はKinKi Kids、関ジャニ∞、King&Prince、SixTONES、Snow Man、なにわ男子と、白組22組中6組を占めた。

一体、選ぶ基準は何なのか、CDなどの売り上げなのか、アーティストとしての実力なのか、人気なのか、キャリアなのか、NHKの音楽番組への貢献なのか、曲の音楽上のカテゴリーなのか、さっぱりわからない。だから、NHKのこの番組制作者とジャニーズ事務所など大手の音楽事務所との「黒い関係」の噂が絶えなかった。

にもかかわらず、いったんこの番組に出演すれば、曲の売り上げも上がるだろうし、公演での観客動員も違ってくるだろうし、テレビ番組への出演の機会も増えるだろう。アーティストの将来はNHKの番組担当者とジャニー氏のような大物との談合によって決まるともいえる。

この点で、紅白歌合戦の担当者は、他の民放の音楽番組担当者よりも、ジャニー氏が影響力と権力を持つうえで貢献したと見ることができる。担当者はこのようなことを知らないどころか、熟知していて、ジャニー氏との関係の親密さを自慢さえしていたという。ジャニー氏はこうして得た影響力と権力を背景として青少年に性加害を行い、それを隠蔽いんぺいしてきたのだ。

「共犯者」が二次被害者を制裁するのはおかしい

この罪重きNHKが、今年の紅白歌合戦には、ジャニーズ事務所に所属するアーティストを出場させないと言っている。なんという自己中心的本末転倒だろうか。これまで述べてきたようにNHKはジャニー氏の共犯である。その罪は、民放より重いといえる。まして、NHKは「公共メディア」を自称し、民放とは違って、国民から受信料を強制徴収している。

ジャニーズ事務所に所属していたアーティストのほうは、NHKのような共犯者ではない。性加害の一次的被害者ではないとしても、とばっちりを受けて仕事を干された二次被害者になるだろう。将来ある若者たちだ。その彼らから、NHKが、キャリア上のブレイクに繋がるかもしれない貴重な機会を奪うというのだ。

何らかの形で反省の意を示したいというなら、ジャニーズ外しではなく、今年の紅白歌合戦は自粛する、つまりやらないというのが筋ではないのか。なぜ、共犯者が被害者に責任を転嫁するのか。