ジャニー喜多川氏の性加害問題で、メディアの責任が問われている。早稲田大学社会科学部の有馬哲夫教授は「NHKは紅白歌合戦に多くのジャニーズタレントを起用し、ジャニーズ事務所とジャニー喜多川氏の影響力や権力を高めることに貢献してきた。NHKの罪は重く、紅白歌合戦は廃止するのが筋である」という――。
日本放送協会(NHK)放送センター=2023年6月7日、東京都渋谷区
写真=時事通信フォト
日本放送協会(NHK)放送センター=2023年6月7日、東京都渋谷区

ジャニーズ問題を騒ぎ続けているのは一部のみ

ジャニーズ事務所元社長のジャニー喜多川氏による所属男性タレント(実際はスカウトしただけの人も含む)への性加害がマスコミを賑わせている。事務所は10月2日に会見を開いて、被害者救済と今後の事務所の運営方針を説明したが、大荒れだった。さらに、会見の運営を請け負ったPR会社が、特定の記者に質問させないよう写真入りのNGリストを用意していたことが発覚して、混乱に輪をかけることになった。

とはいっても、ながながと騒いでいるのは、例によってテレビのワイドショーやスポーツ紙などで、全国紙などは減税など重要トピックにシフトしている。X(旧ツイッター)などのSNSでは、最初からこの問題の受けとめは冷ややかだ。

とくに、熱心なジャニーズファンでもないZ世代は、SNSを通してニュースに接し、これについて書かれた多くの多角的コメントを読んでいるので、上の世代より反応が薄い。これは「終わった話」だからだ。

ニュースとしてはすでに「終わった」話

「終わった話」とは、事件として、ニュースとして「終わった」という意味で、被害者救済が終わったという意味ではまったくない。加害者本人のジャニー氏はすでに亡くなっていて、被害者が増えることも、被害が継続することも、拡大することももはやない。被害者たちの心情は察するにあまりあるが、事件としては現在進行中のことではなく、過去のことだ。

ニュースとしてはどうかというと、このスキャンダルは元フォーリーブスの北公次氏が1988年11月に『光GENJIへ』(データハウス)を出版したときから知られていた。この本は約35万部を売り上げ、そのあと『光GENJIへ 最後の警告』(データハウス)など5冊の類書も次々と出された。少なからぬインパクトがこの時点であったといえよう。

1999年には週刊文春がジャニーズ事務所に関する記事を14週連続で掲載し、元ジャニーズJr.らの性被害を報道した。これに対しジャニーズ事務所は、文藝春秋を名誉毀損きそんなどで提訴したが、2004年2月24日、最高裁判所がジャニー氏による性加害を認定した。ニュースとしては、1999年に週刊文春が連載した段階で、あるいはその後の裁判の判決がでた段階で「終わっている」。