小学校のテストで90~100点が取れていないと厳しい

では、どういうケースの場合、“ゆる受験”は可能なのか?

まず、“ゆる受験”ができる子の絶対条件として、基礎学力が付いていることが前提となる。基礎学力とは「読み・書き・計算」の基本ができていること、小学校のテストで評価するなら90〜100点が安定的に取れる子を意味する。また、学校の宿題は自分でやる、毎日決まった時間に決められた量の家庭学習ができるといった学習習慣が身に付いているかどうかも大事なポイントだ。そういう子であれば、偏差値55(四谷大塚)くらいまでの中堅校なら“ゆる受験”も可能だろう。

ただし、他の子が3年かけて4教科を学ぶのに対し、2年または1年で挑戦するには、よほど地頭のいい子でない限り、2科入試か適性検査型入試を実施している学校が受験校として選ばれることになる。その中に本人が行きたい学校があれば、“ゆる受験”を選択するのもアリだろう。

そうではなく、中学受験をするか・しないかの決断ができないまま、5年生くらいになって「やっぱりうちも受験させようかしら?」と遅れて受験勉強をスタートさせると、短期集中で仕上げなければならないため、かえって子供には負担になる。また、2科入試や適性型入試で受験をするとなると、思っているほど受験できる学校がないことを知っておいてほしい。特に男子校は2科受験できる学校は非常に限られている。

赤点のテストの解答用紙を後ろ手に隠している男の子
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入学後に差が出てしまっても不思議はない

また、万が一合格できたとしても、入学後、4教科入試で入ってきた子と2科入試や適性検査型入試で入ってきた子とでは、知識量の差が生じる。中学入試で求められる理科・社会の内容は非常に幅広く、膨大な量の知識が必要になる。さらに難関校はもちろん、近頃は中堅校でも小学生の子供にここまで深い考察力を求めるのかというレベルの高い問題を出してくる。こうした問題に立ち向かってきた子とまったく触れてこなかった子とでは、入学後に差が出てしまうのも当然だろう。

だが、一番残念なのは、中学受験の学習プロセスの中で身に付く教養の深さや考える型、物事の見方といった、その先の将来にも生きる力が十分に得られないまま受験を終えるケースが多いことだ。