フリースで全国的な認知度を獲得することに成功

1998年、都心のど真ん中の東京・原宿店をオープンするとともに、軽くて暖かいフリースに価格破壊をもたらす大々的なキャンペーンを展開し、「ユニクロといえば、フリース」として全国的な認知度を獲得することに成功した。一時の停滞から抜け出して更なる成長軌道に乗ると、売上高1兆円を目標に掲げ、2001年にイギリス、2002年に中国、2005年にアメリカと海外進出を加速させていった。

ユニクロフリース20周年・会見する柳井正社長
写真=時事通信フォト
2014年10月15日、「ユニクロ」のフリース発売20年記念発表会で会見するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長。ユニクロの名を全国に広めた商品フリースは1994年の発売から20年を迎え、全世界で累計3億枚を販売(東京都目黒区の恵比寿ガーデンルーム)

ヒートテック、エアリズム、軽量ダウンに代表される「機能性衣料」という新ジャンルの開拓などを原動力に、ユニクロは飛躍を遂げて、2013年には目標としていた売上高1兆円を、日本のアパレル業界で初めて突破した。そして2021年2月、時価総額が10兆8725億円に達し、ZARAを展開するスペインのインディテックス社を初めて抜いて、「世界一のアパレル」という金字塔を打ち立てた。

「世界のスタンダード」への道を進む

山口県の小さな紳士服店から、日本を代表するアパレルへ飛躍を遂げ、いまや世界でも五指に入るファストファッション・ブランドになったユニクロだが、長い間、好ましくないブランドイメージが付きまとっていた。「地方のロードサイドの店」というイメージが根強く、「安かろう、悪かろう」のブランドとして、ユニクロを着ていることを隠す「ユニバレ」や「ユニ隠し」といった言葉が生まれていたほどだった。

そんなブランドイメージを、機能性衣料のヒット商品を数多く生み出すことなどを通じて、生活をより良く過ごせるようになる、スマートな衣服のブランドへと更新していった。2010年には、ブランドコンセプトに「MADE FOR ALL」を掲げて、ユニクロが目指す道を明確にした。それが、「国籍。職業。性別。人を区別するあらゆるものを超えた、あらゆる人々のための服」であり、「世界中の人々が、それぞれのスタイルで自由に組み合わせ、毎日気持ちよく着ることができる服」であり、「シンプルで必要不可欠でありながら、ライフスタイルをも変えていく革新的な服」である。

2013年には、作り手視点だった「MADE FOR ALL」を、ユーザー視点の「LifeWear」に昇華させ、「あらゆる人の生活を、より豊かにするための服」、そして「生活ニーズから考え抜かれ、進化し続ける普段着」として、世界中で愛されるブランドを目指している。ユニクロは、国や地域、年齢や性別、好みや価値観に関わらず、誰からも選ばれるブランドを目指して、流行をおさえつつも廃れにくいスタンダードな衣服となる「世界のスタンダード」への道を進んでいる。