センチュリーとしての最適解

なぜSUVと付けなかったのか? 月販30台なのか? 2500万円なのか? それはセンチュリーという特別な存在を考えればわかります。

おそらく変わらず台数を追わなくてよいのです。まずはセンチュリーとして、日本のVIPにしっかりとした品質をお届けする。そのために最低限の生産台数を確保したい。

イラズラにセンチュリーSUVと名付け、世界に打って出る新ジャンルの高級車のようなイメージは付けたくない。世論をオオゲサに誘導したくない。そのような狙いがあったのかもしれません。

もちろん新型から世界マーケットには出るようですが、だからといってグローバル月販数百台とか数千台などの目標は掲げていませんし、大風呂敷は決して広げない。

あくまでも「新世代センチュリーとして現代化」するのが最重要項目で、グローバル化は二の次。そのような背景が見えてきます。

その感覚こそがマスコミとの温度差なのかもしれません。

世界初の「フルフラットモード(リア両席)」を搭載し、後席シートをフルリクライニングすることで、ほぼフラットな状態で寝ることができる
画像提供=トヨタ自動車
世界初の「フルフラットモード(リア両席)」を搭載し、後席シートをフルリクライニングすることで、ほぼフラットな状態で寝ることができる

決して世界に打って出るわけではない

トヨタがセンチュリーを進化させる、SUV化させると聞くとマスコミは勝手にトヨタが新富裕層ビジネスに着手する、センチュリーSUVで世界に打って出る、と考えがちです。そのほうが驚きますし、面白いからです。

しかし、本気で新富裕層ビジネスに討って出るためにはディーラー網を整備しなければなりませんし、右ハンドル車以外にも左ハンドル車を作り、各国の安全規制や排ガス規制にマッチさせなければなりません。

ましてや特別な高級車ですから、プレミアムな演出はもちろん、セールス教育からサービス体制まで絶対に失敗しないチャレンジをしなければなりません。既存プレミアム、レクサスとの関係も考えなければいけないでしょう。

 というか本当に新型でロールス・ロイス カリナンと対決するのならば、既存プレミアムのレクサスブランドを当然使うべきで、となると車名もレクサスLZ600hだったり特別なレクサス・センチュリーになったりはずです。

しかし今回はそこまで踏み込む気は無く、あくまでも歴史あるトヨタ・センチュリーを永続させようという目的。そのための存在がいまの新型センチュリーの姿なのではないでしょうか。

【関連記事】
車幅は小さく、荷台は大きく、壊れない…日本の軽トラが「世界でいちばん実用的なクルマ」と絶賛される理由
注文殺到で新規受注は停止中…ホンダの「500万円のマニュアル車」がとんでもない人気を得ているワケ
「今から行くから待ってろコラ!」電話のあと本当に来社したモンスタークレーマーを撃退した意外なひと言
「お母さん、ヒグマが私を食べている!」と電話で実況…人を襲わない熊が19歳女性をむさぼり食った恐ろしい理由
「ねえ、ラブホいかへん?」夜の街で家出少女に声をかけられた牧師はどう答えたか