「強盗じゃなかったのか、はぁーっ!」
聞くと、3人の男たちは地元の区役所に雇われている駐車違反の取り締まり班だという。
建物の中に入ると正式な罰金になって5000ナイラ、ここで自分たちに払って見逃してもらいたいなら、2000ナイラだという。
(強盗じゃなかったのか、はぁーっ!)
地獄から天国に行ったような気分だった。
「ちょっとボスに電話させてくれますか?」
再び携帯電話で石井に電話をかけ、今の状況と場所について説明すると、石井も一安心し、会社に常駐しているラゴス警察の警察官たちをすぐに差し向けるという。
30分ほどで、数人の警察官と、羽交い締めにされ、置き去りにされた運転手が車で駆け付けた。
3人の男たちと警察官たちがナイジェリア独特のピジン・イングリッシュで激しい口論を始め、殴り合いになるのではないかと思うほどヒートアップしたあと、2000ナイラを支払うことで決着した。
皆、一転して笑顔になり、兄弟の契りを確認するハイタッチと握手が行われ、互いにブラザーと呼び合う。どうやら同じ部族であることが分かったようだ。
この国は、ハウサ、ヨルバ、イボ、フラニ等、250以上の部族が住む多民族国家で、彼らの発想は日本人にはなかなか理解できない。
ただ一人、運転手だけが釈然としない顔をしていた。
ゼネストの方は、「ナイジェリア労働会議」が政府と交渉し、ガソリンの値上げ幅は10.5パーセント、灯油の価格は据え置きということで決着し、5日間で終わった。