野田が消費税増税に取り組むことになる背景の事情について、野田と一緒に財務副大臣を務めた峰崎直樹(現内閣官房参与。元参議院議員)が解説する。
「政権交代の後、2010年に入って、もう消費税を上げるしかないということになった。そうなると、麻生内閣がつくった所得税法附則に返る。結果的に民主党は自公政権の路線にターンバックし、抱きついた。菅直人前首相は11年1月、あの案をつくった与謝野馨さん(元財務相)を経済財政担当相にして社会保障と税の一体改革を進めようとした。与謝野さんは去年の6月30日、所得税法附則に基づいて法案をつくり上げた。野田さんはそれを継承したということです」
野田は政権を担う前、増税を主張した形跡はない。だが、財務副大臣、財務相を歴任して、にわかに増税派に変身を遂げた。財政破綻の危機や日本国債の信用不安、社会保障の財源難、予算編成の困難などを深刻に受け止め、国政の最優先課題と強く意識したに違いない。
だが、それだけでない。政治の安定と自身の政権運営を考え、就任時から、消費税増税にとどまらず、もっと大仕掛けの政権構造の変革プランを思い描いていたのではないのか。
就任5カ月後の12年1月24日の施政方針演説で「重要課題を先送りしてきた『決められない政治』からの脱却」を唱えた。これが「野田の野望」を読み解くキーワードである。
「決める政治」の実現にはねじれ克服が必要だが、現状のままだと、最短でも16年の参院選までねじれが続く可能性が高い。通常、与党は参議院で少数勢力の取り込みを図ってねじれを克服しようとする。だが、逆転の発想で考えると、参議院で多数を結集し、その勢力が政権を握れば、ねじれは解消する。