「決められる政治」を実行し、自公の協力を得て消費増税法案を成立させたが、その代償は大きく、民主党を分裂させた野田佳彦首相。党首会談で「近いうちに」国民に信を問うことを約束したが、そのとき民主党、日本の政治はどうなっているのか。
二大政党が終わり、第三極は躍進するか
野田佳彦首相が首相就任後、「大仕掛けのプラン」を実行してきたと見るなら、この1年で民自連携、反対派追放、増税法案成立と着実に結果を出してきたと映る。12年9月に代表再選を果たし、民自大連立を樹立すれば、プランはほぼ達成される。
だが、見込み違いも目立つ。「近いうちに」という言い方で、やりたくない早期解散を半ば約束させられた。それ以上に大きな誤算は「背を向ける民意」だろう。増税法案成立など、自分なりに結果を出しているのに、支持率低落が続く。
8月13日発表の共同通信の世論調査では、野田内閣の支持率は27.9%、民主党の支持率は11.8%(自民党は20.8%)という水準だ。野田首相の不支持の理由は「経済政策に期待が持てない」(22.1%)、「首相が信頼できない」(13%)の順だが、民意を問わずに先に消費税増税法案を成立させる手法に見られる野田首相の民意軽視姿勢も「信頼できない」の大きな要因だろう。
野田の側近で、首相補佐官を務める手塚仁雄(衆議院議員)が、野田の素顔と「野田流」の中身を紹介する。
「軸がはっきりしていて、ぶれない。ですが、野田流の一番わかりやすいスタイルは、後退しないこと。スピード感はないかもしれないが、消費税増税も含めてすべての局面でそれを感じた。それから奇をてらうことはできない。結果を出したいと思ってやっている。それにはポピュリズムに走らず、慎重に対応する。選挙のことを考えず、明日の日本を考え、そのためにこうするんだと訴える。それを国民は理解してくれる。そう信じるしかないという境地だと思います」
ぶれずに、わが道を一歩ずつ前進するのが野田流の真髄と見られるが、政治指導者として民意を汲み上げ、国民との約束を守り、有権者の判断を仰ぐという発想と姿勢は見えない。「選挙を考えず」といっても、選挙は確実に訪れる。首相の口から出た「近いうちに」がいつを意味するか、議論は尽きないが、総選挙は向こう1年以内に必ず実施される。