「話す代わりにツールを見せる」という方法

それでも営業職に就けば自然とトークがうまくなると思っていましたが、それは甘い考えでした。同僚ともうまく会話できない人間に、お客さまとの会話が続くわけがありません。

家に帰ってお風呂で一人で会話の練習をしたり、こっそり会話教室に通ったこともあります。

それでも上達する兆しは一切なし。

そこで私は、上手にしゃべる練習をあきらめました。

上手にしゃべるより、別の方法を選んだほうがいいという考えに至ったのです。

営業の仕事とは、お客さまに商品の良さを伝えて買ってもらうことです。「話す」というのはその「伝える」ための手段。

では、「話す」とは別の方法で、「伝える」ことはできないか。

そこで、「話す代わりにツールを見せる」という方法を取ることにしたのです。

例えば、以下のようなことです。

「便利です」→使い方の例をイラストでわかりやすく見せる
「丈夫です」→耐久テストのデータを見せる
「安いです」→他社との比較、業界内での比較表を見せる
「安心です」→サポートやアフターフォローが充実している資料を見せる

私のカバンが常にパンパンだった理由

つまり、言いたいことに関する資料やデータなどのツールを準備しておき、必要に応じて見せるのです。こちらが話すのは、「その点につきましては、こちらをご覧ください」というひと言のみ。

ツールに頼る説明は、何もない中でしゃべるよりも圧倒的にラクでしたし、何よりも言いたいことが正確に伝わりました。客観的なデータなので、お客さまの納得感も強まります。

私の営業カバンは大量の資料でいつもパンパンでしたが、この道具は私の言葉を補ってくれる強力な武器となりました。

すると、それを見た同僚たちが、同じものを使って成果を出し始めました。便利なものは誰が使っても便利なのですね。

しゃべることが苦手なら、別の手段で伝える工夫をすればOKです。

カバンから書類を取り出すビジネスマン
写真=iStock.com/YurolaitsAlbert
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