社員が望んでいることを知る
リテンションの問題に正面から取り組んでいる企業の一つが、フォーチュン1000社企業数社にサービスを提供しているCRMコンサルティング会社のクアエロだ。成長モードから生き残りモードに移行する中で、クアエロの経営陣は一時的な給与カットを含む厳しい選択を行ってきた。
人的資源担当取締役、デービッド・ドライズデールはこう語る。「社員の状況を最も否定的にとらえると、『これほど会社に尽くしてきたのに、会社はそれを当たり前だと思っていて、自分の貢献をきちんと評価してくれない』と不満を持つ社員もいるかもしれない。金銭的な利益を得ていない。仕事の希望もかなえられていない。おまけに会社には、彼らを重要な形で本当に仕事に参加させる姿勢が薄れてきている」
クアエロはこの点を認識して、士気を高め、関与(engagement)を深めるための活動をいくつか並行して行っている。1対1のミーティング、コミュニケーションと情報の共有をトップが率先して改善する努力、より柔軟な作業スケジュールへの移行、03年度の四半期ボーナスを、設定された目標純利益を達成することを条件に金銭できちんと支払うなどだ。
これに劣らず重要な活動として、社員の意見や優先事項の明確な基本線を把握するために、全社員に対する社員コミットメント調査を行っているクアエロの場合、ポイントは、経営陣が調査の前に、調査結果を踏まえて必要な行動を取ると公約したことだった。クアエロの社員調査の効果を判定するには、まだ時間が必要だ。しかし、すでにある程度の成果は出ている、とドライズデールは言う。
「われわれは、雇用市場が回復したら重要な人材を失うかもしれないという強い危機感を持っている。会社全体の士気は経済全体と同様、おそらく折り返し点を過ぎたところだろう。上向きに転じてはいるが、まだ緩やかな上昇にすぎない。われわれの課題はそれをもっと急勾配の上昇にすることだ」