YouTubeやTikTokよりはるかにマシ

読書をすすめる人の多くは、本を読むことで知識や教養の向上が期待でき、仕事や日常生活で役立つだけでなく、人間関係を築く上でも重要な要素となる。さらに、物語の中に出てくる登場人物や状況を理解することで、自分の感性や想像力が豊かになる。

時には本を通じて共感や理解が深まることで、友人や家族との会話がより豊かになるといったことを言うかもしれません。私の場合読書によって人間関係が良くなったということはありませんから、自分が楽しければそれでいいのです。むしろ読書を「何かの役に立てよう」と思う発想自体がつまらない。

しかし、読書をしようと思い立っただけでも、YouTubeやTikTokしか観れない人よりはマシかもしれません。人間は基本的に今自分が置かれている枠組みの中でしか物事を考えられません。

TikTokアプリ
写真=iStock.com/Wachiwit
※写真はイメージです

その枠組み、システムともいいますが、そういったものを批判的に見るには、知的な訓練を受け、抽象的な思考をする必要があり、それを打開するための最善の方法が読書なのです。

単純に楽しいということの他に本を読む理由があるとすれば、こうした思考を手に入れるためです。とはいえ、そのためには「自分が読んでわかる」本を読むのではなく、世界は複雑である、ということを学べる本を読む必要があります。

「自分の頭で考えろ」とバカを唆すバカ

ちょうど、内田樹(@levinassien)先生が、2023年6月8日付のTwitter(現・X)で《図書館の人たちの集まりでの講演のために大阪に向けて出動。「図書館の効用は目に見える数値で考量することはできません」という話をします。本を読むことの最大の喜びは「今、ここで支配的な価値観」を一時的に(場合によると永遠に)無効にすることなんですから》《「この本読むとどういういいことがありますか?」というタイプの質問には「君が自明だと思っている『いいこと』の定義が揺らぐことかな」とお答えするのがよろしいのでは》とツイートしています。

今の世の中には、「自分の頭で考えろ」とバカを唆すバカが溢れています。本人たちは自分で考えて古い考えに染まった頭の固いバカたちが思いつかない目新しいことを言ったつもりでいるのでしょうが、バカの思いつくことなど、とっくの昔に誰かが言っている陳腐な戯言に過ぎません。

既に2500年ほど前の中国の古典『論語』にも「学びて思はざれば則ち罔し。思ひて学ばざれば則ち殆し」と書かれています。他人から教わるばかりで、自分で考えないと判断力が養われない。

自分で考えてばかりで人から学ばないと、視野が狭く考えが偏るので危険このうえない、ぐらいの意味です。自分の頭で考えろ、などと言うバカは昔から世に溢れています。