最後の「東大卒・元官僚」は宮澤喜一氏
大統領や首相など国の指導者は、すべての職業の中でも、最高の知力、専門知識、職業経験を必要とする仕事のはずである。実際、米国はハーバード大学、英国はオックスフォード大学、フランスはフランス国立行政学院(ENA)の卒業生が多い。
日本でも、戦前の首相は帝国大学出身の官僚か職業軍人が原則だったし、戦後も昭和が終わるまでは官僚、弁護士、ジャーナリストなどが多かった。
ところが、平成になると地方政治家が多くなり、やがて世襲政治家の天下になった。最後の東京大学法学部出身で元官僚の宰相は、1991年に就任した宮澤喜一である(93年に退任)。
それ以降、上智大学出身の細川護熙以降の最終学歴は、成城大(羽田孜)、明治大(村山富市)、慶應大(橋本龍太郎)、早稲田大(小渕恵三)、早稲田大(森喜朗)、慶應大(小泉純一郎)、成蹊大(安倍晋三)、早稲田大(福田康夫)、学習院大(麻生太郎)、東京大工学部(鳩山由紀夫)、東京工業大(菅直人)、早稲田大(野田佳彦)、法政大(菅義偉)、早稲田大(岸田文雄)だ。
※大学名は現在の名称に統一
トップクラスの知力の持ち主とは言いがたい
学歴が一人ひとりの知的水準をそのまま表しているわけではないにしても、全般的に見たとき、諸外国の指導者のほとんどが、自国におけるトップクラスの学歴と知力、一般教養、専門知識を持っているのとは大違いだ。上記の総理大臣の学歴リストは、たとえば、一流企業総合職採用の出身校の分布より低レベルなのではないか。
上記のなかで、知力では東京大学工学部卒の鳩山由紀夫が群を抜いているのだろうが、器用な受験勉強的秀才で、一般教養を深めた風情でない。細川護熙は近衛家の伝統につながる公家的で特殊な教養人だ。安倍晋三は地頭の良さは間違いないが、本当にまじめに本を読んで勉強したのは、第1次政権で大失敗して下野してからという印象がある。
これから詳しく分析するように、戦前から戦後にかけての歴代首相が、旧制高校から帝国大学、陸軍士官学校・海軍兵学校から陸軍大学・海軍大学、さらに、ほとんどが海外留学・勤務の経験を持っていたのと比べ、劣化が激しいのである。