阪神・淡路大震災でも倒壊は少なかった

震災後に分譲された湾岸マンションは、いずれも液状化をはじめとした防災対策を強化している点もプラスに評価されているようだ。例えば東雲の物件は敷地内で新たに液状化対策を追加したうえ、建物内に防災倉庫を9カ所設置し、非常用発電機を増強して非常用エレベーターの稼働時間を法規制の5倍に相当する約20時間とした。また晴海の物件は地震の揺れを低減するため免震構造を採用したほか、各フロアに3日分の水や食料、簡易トイレを備えた防災備蓄倉庫を設置するといった具合だ。

住まい研究塾 大森広司氏

さらに湾岸エリアは、防災面でむしろ安全性が高いとする見方もある。「首都圏では大震災による液状化がクローズアップされましたが、被害のあった地域でもマンションの建物自体はほとんど無傷でした。地下の硬い支持層まで杭を打っているうえ、液状化が地震の揺れを吸収する効果もあります。阪神大震災でも液状化の被害が大きかった六甲アイランドでは、建物の倒壊はむしろ少なかったのです。加えて湾岸エリアは道路が広く整備されており、直下地震で懸念される火災に対しても『防災力』は高いといえるでしょう」(東京カンテイ市場調査部上席主任研究員・中山登志朗氏)。

ここでは東雲と晴海の物件にフォーカスしたが、今後も湾岸エリアで分譲される大規模マンションに関しては防災対策の強化を打ち出すものとみられる。価格設定さえ誤らなければ、引き続き高い人気が予測されるだろう。

※すべて雑誌掲載当時

住まい研究塾 大森広司(おおもり・ひろし)
1962年、東京都生まれ。立命館大学法学部卒。住宅系シンクタンク・オイコス代表。All About「マンション入門」ガイド。著書に『新築マンション買うなら今だ!』(すばる舎)など。
(撮影=長谷川博一)
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