先日、高い確率で発生が懸念されている首都直下型の大地震について、「今後4年以内に70%の確率で起こりうる」という計算結果が公表され、世間は大騒ぎになりました。新聞やテレビがこぞって取り上げ、関係機関へは問い合わせが殺到したということです。(※雑誌掲載当時)

このときは同時に「今後30年では98%の確率で起こりうる」という予測も出されていました。同じ前提に立って導き出された結果であり、客観的には同等の危険度であるはずです。ところが、一般の人がもっぱら衝撃を受けたのは「4年で70%」のほうでした(その後、時間の経過とともに確率計算の前提が変わったため、「70%」「98%」ともに現時点での危険性とは異なる)。

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人間は「遠い将来の危険」に鈍感である

不思議といえば不思議なことですが、人間の認知のあり方を考えれば、必ずしも奇妙なことではないのです。2つの切り口から考えることができます。

まず一つは、対象とする期間の長さです。たとえば、ある地域では150年おきにマグニチュード(M)8クラスの大地震が繰り返し起きているとします。すると、向こう150年での発生確率はほぼ100%。ところが、150年という期間は人間にとってあまりにも長すぎ、地震が起きるまで自分が生きているかどうかわからない、という気持ちが先に立ちます。したがって、なかなか身に迫ったものとは感じられません。

その期間が「30年」だったらどうでしょう。30年先ならば、いま生きている人の多くが存命のはずです。が、災害などへの感度がどれだけ高いかを調査すると、若い人のほうが危険への感度が鈍く、中高年になるほど感度は高まっていくという傾向があります。とくに老年世代は危険に敏感です。

そして高齢者にとっては、30年先であっても150年先と同じように「生きているかどうかわからない」期間です。そのため「30年で98%」という数字よりも「4年で70%」という数字のほうに衝撃を受けるのです。