目的の1つは現地の社員教育だ。店舗経営の原理原則、つまり当社のDNAを理解し、そのやり方を体現できる店長=経営者を育てること。もう1つは日本人社員自身に全世界で通用するリーダーシップを身につけてもらうことにある。現地社員の育成とそれを通じてグローバルなマネジメント力を身につけるという一挙両得の人材戦略である。
海外人材の比率が高まるなか、日本人だけの内輪での仕事のやり方は通用しなくなっていく。海外の人材に、なぜこんなやり方をするのかと問われて「これがユニクロの基準だから」「日本でもやっているからやってください」では誰も動いてくれない。ユニクロの原理原則をきちんと理解したうえで自分の言葉で説明し、見本を見せられるようでなければならない。
海外に出てうまくいかない日本人は数多くいるが、メンバーが言うことを聞いてくれないから自分でやってしまうのは悪いパターンだ。日本ではよく働く人だと評判がよくても、海外の人材は尊敬してくれない。基準を曲げず、どんな国の人に対しても対話を通してきちんと要求していけるリーダーが求められている。そうしたグローバルに通用するリーダーシップやマネジメント力を身につけなければ当社では生き残れない。
今後、海外に年間200~300店舗新設していく予定であるが、それを担う人材が足りない状況だ。店長をはじめ中核となるミドルマネジャー、その国の経営を任せる経営陣も足りない。現地での採用と育成も大事であるが、日本にいる社員全員が世界で活躍してもらわないと困る。
12年3月から社内の英語公用語化も始まる。会議に母国語が異なる社員が1人でもいれば英語を使うことになる。それに向けて全社員にTOEIC700点以上の取得を義務づけている。現在、店長や本部社員の全社員約2000人が、少なくとも週10時間以上の英語研修を受講している。会社の全額負担であるが、TOEICのスコアが一定以上に上がらないと自己負担になる。(※雑誌掲載当時)
国内にとどまりたいという社員は今後当社では働いていけないだろう。もちろん、個別の家庭の事情がある人は最大限の配慮はする。しかし、会社自身がグローバル化し、店長が海外にどんどん出ていくと同時に、海外から日本に来た外国人を教育しなければいけないときに、自分はグローバルな働き方はできないという人には、残念ながら活躍できる場はないだろう。
※すべて雑誌掲載当時