教員の操作ミスで漏水、教員が私費賠償のケースも
これらは公費と呼ばれる自治体が負担する費用とされるが、教職員の過失による漏水(止め忘れや操作ミス)の場合は教職員の私費で賠償とされる場合もある。中学校の場合は保健体育科という限られた教員で管理しているため操作等にも慣れているが、小学校は学級担任が交代で管理している場合もあり(その年、たまたま体育主任に充てられた教員という場合もある)、漏水事故は小学校に多くみられるようだ。
この問題は最近でも報道があった。教員の操作ミスにより、数日間にわたり漏水が起こった分の水道料金を自治体が教員に弁償(半額)を求めた事件である。ほかには、自治体が全額負担(公費)、教員が全額負担(私費)というパターンも存在している。教員個人が私費で賠償するパターンも少なくないため、賠償保険をかけているケースがみられるようになった。
しかし、公務員である教員はその公権力行使による職責で「過失によつて違法に他人に損害を加えたときは」自治体が賠償の責任をもつと国家賠償法により定められている(第1条第1項)。ただし、「重大な過失があつたときは」その本人に求償する=賠償を求めることができるとされている(同条第2項)。
今回の場合「違法に他人に」というわけではなく自治体への「損害」であり、ストレートに適用されるわけではないが、その主旨を鑑みるならば公費保障が妥当であろう。
プールの管理に関しては設置者による丁寧な研修が施されている場合は少ないし、各校により管理方法(水道の系統や濾過機の操作等)は大きく異なっている。それを管理職が熟知している場合も少なく、実質的に管理している事務職員でも同様である。このような状態で「重大な過失」とされることには問題を感じる。
ただでさえ、教科指導以外の専門外について、教員だからという理由で施設設備の管理を担うような仕事が多い。複雑なプールの管理を現場任せにする自治体こそ「重大な過失」があるといえるのではないだろうか。こうした事故はこれまでも何度もあり、これからも続く可能性がある。排水栓・給水栓の締め忘れを防止するためのセンサーや警報器などの開発・設置を行政として進める必要があるだろう。
年数時間の水泳授業のための保護者負担
また、保護者の負担も大きい。水道代こそ私費に転嫁されていないが、指定の水着や帽子という一般的な負担に合わせてラッシュガードや腰に巻くタオルなども学校からあっせんされることは多い。すべてそろえれば5000円程度の費用がかかるだろう。
また、場合によってはゴーグルやサポーターも必要であるし、もちろんすべて私費負担=所有物が前提となる。天候にも左右され、年間数時間しか行われない水泳授業のための負担としては、大きいだろう。教員に子どもの氏名がすぐわかるように、帽子と水着に大きなゼッケンを縫い付けたり貼り付けたりする必要もある。もちろん数回しか水着を着なくても、身体が大きくなれば買い替えが必須となる。プールで使う共有物=公費負担は、設備を除けば、前に述べた管理用品や水、コースロープやビート板くらいである。