老いを自覚したら少しずつ次世代への貢献を意識したい

私は、「老い」は「いいシニア」になるためにあるのだと思っています。自分が生物学的な衰えを感じ始めたら、次には死を意識します。この頃から少しずつ利己から利他へ、私欲から公共の利益へと自身の価値観をシフトさせていくきっかけにするのはどうでしょうか?

老いを悔いたり、死を必要以上に恐れたりしてもどうにもならないし、かえって元気がなくなります。いきなり180度価値観を変える必要はありません。やり残したことに全力を傾けるのももちろんいいと思います。老いを感じて死を意識したら、少しずつでも世のため、次世代のためにという意識を持つようにしたらそれで十分です。これが「人の老いの意味」だと考えています。

昆虫界の「最強のシニア」はミツバチの巣にいる

多くの生き物はヒトのように自身で生活環境を変えたり、遠くに逃げたりはできないので、周りの環境に究極的に適応したライフスタイルを持っています。いつもびっくりさせられることばかりです。

ヒトではシニアがいる家族や集団が栄えて、結果として寿命が延びてきました。もっと極端にシニアが活躍する例が、社会性の昆虫に見られます。社会性の昆虫の代表は、ハチやアリです。たとえばミツバチのほとんどは働きバチで、それらは全てメスです。メスと言っても女王バチ以外は卵を産めず生殖に関わらないので、性別はあまり関係ないかもしれません。

若い働きバチは、主に巣の中で巣作りや幼虫の世話をします。少し年配の働きバチは、野原を飛び回り花の蜜を集めます。危険な業務を年配のハチが行っているようにも見えますし、外で自由に飛び回れていいな、という見方もできます。いずれにせよ働きバチの寿命は数カ月程度ですので、ヒトから見れば、内勤のハチも外勤のハチも「若手とシニア」というほどの年齢差はありませんが、彼らの寿命から考えたら、大きい差なのかもしれません。

巣に群がるミツバチ
写真=iStock.com/temmuzcan
※写真はイメージです

実はポイントはここではなくて、もっとすごい真のシニアがいます。それは女王バチです。働きバチの寿命が数カ月であるのに対して、女王バチはなんと3年(働きバチの10倍以上!)も生きます。女王バチは一から巣を立ち上げ、まずは交尾をしないで無性生殖で無精卵を産みます。