自宅にこもってソシャゲでもやっていた方がマシ

自分がハラスメント加害者、最悪の場合は性犯罪者予備軍として扱われてしまう極大のリスクを冒して得られるのが「女性と仲良くなれるかもしれないチャンス」というのは、いまどきの男性にとっては――とくに倫理観や人権感覚がアップデートされた若い世代にとっては――あまりにも「割に合わない」行為に思えてならない。

女性から「キモがられる、ウザがられる」くらいなら、「あちゃー、ダメだったか。まあいいや、次の女の子に当たっていこう!」くらいのテンションで済むかもしれない。だが「ハラスメント加害者」とか「性的加害」とか「人権侵害」とかとまで言われてしまうと、さすがにそんなリスクを負ってまで「女性と仲良くなる」は割のよい報酬には見えない。それなら自宅にこもってソシャゲでもやっていた方がマシだ――となってしまう。

マッチングアプリでも男性が「アプローチする側」

現代日本の妙齢の男性たちにとってつらいところは、異性関係構築のリスク・リターンが割に合わないからといって、それ以外に女性との性的関係値を得るようなオルタナティブが存在していないことだ。マッチングアプリといった新しい出会いの方法は登場したかもしれないが、そこでも結局「アプローチする側=男性/アプローチを受けて評価する側=女性」という基本的な構造は変わらない。

スマートフォンでいいねを押す手元
写真=iStock.com/Tonktiti
※写真はイメージです

残念ながら「有害性のない、まったく新しいアプローチの方法」や「女性が男性にアプローチする意識改革」が生じたり、あるいは「お見合い文化」がいつか復活したりするのを信じて待っていたら、おそらく今の若者たちが老人になってしまうくらいには途方もない時間がかかってしまうだろう。自分自身が後世に遺伝子を残したければ、「加害者になる」というリスクとコストを引き受けるしかない。

言い換えれば、自分の胸に手を当ててとことんまで自問した結果として「自分の遺伝子を残すこと」についてそれほど至上の価値を見いだせないのであれば、そうまでして恋愛や結婚を志す必要はないといえる。そして実際に胸に手を当てて「恋愛や結婚は別にいい」という結論を出している若者が増えていることは統計が静かに物語っている。