「黒子」から「最新オフィスワークの実践者」に

自らも試行に積極的な三菱地所の姿勢は、2018年の本社移転にも表れている。それ以前の三菱地所は、再開発の進む丸の内のなかで相対的に古びたビルに本社を置いていた。再開発で生まれた最新のビルはクライアントに提供し、自らは黒子に徹していたのである。

ところが三菱地所は、2017年竣工の大手町パークビルディングに、2018年に本社を移転する。新本社は、「新たな価値を創造し続けるオフィス」の実現をめざしたものだった。最新のオフィス空間を自ら体験することで、社員たちはその便利さや快適さを実感することになった。リモートワークもこの時期に導入されている。

三菱地所新本社オフィスの全体イメージ(出典=三菱地所)
三菱地所新本社オフィスの全体イメージ(出典=三菱地所)

新規事業創出を目指す「アクセラレータープログラム」

そして、スタートアップとのオープンイノベーションによる新規事業創出を目指す「アクセラレータープログラム」、三菱地所の既存事業にはない知見をもつ人材を公募により受け入れる「副業・兼業人材の公募」、業務時間の10%を通常業務以外の社内変革に充てることを必須化する「10%ルール」などの制度が、この時期に相次いで創設されていく。10%ルールの対象となるのは、自ら手を挙げて行う新規事業だけではなく、他の社員が行うこうした新規事業のサポート、あるいは業務効率化のための取り組みなども含まれる。

さらに2021年には、2009年に導入された「新事業提案制度」の参加対象者をグループ社員にまで拡大。同制度の一層の強化を図った。社員が自発的に提案した新規事業を、社内コンペを経て採択し、社内ベンチャーを走らせていくこの制度は、社内外の人材を柔軟に活用できるようになったこともあり、一段と活性化しているという。